皆さんこんにちは。株式会社オージーフーズが運営する青果専門店とっておきやの最年長青果担当の杉本(66歳)です。
干し柿の中でもとくに「あんぽ柿」をテーマに、その特長、種類、産地情報などなど深~くお話しいたします。産地で撮影した写真なども掲載します。
目次
あんぽ柿と云えば、冬場のとっておきの甘味としても昔から馴染み深い一品ですね。根強いファンの方が多くいらっしゃいます。あんぽ柿ファンの方にぜひ読んでいただきたいブログ記事です!
あんぽ柿とは
あんぽ柿とは甘くてトロみのある食感が特長の干し柿の一種
あんぽ柿とは水分含有量35~40%ほど残して乾燥し作られた柿の加工品です。干し柿の一種と云えます。
※この水分含有量は産地や柿の品種、柿の生育状況で数値は変わる事も有りますよ。
「柿の加工品」と云っても、砂糖などは不使用です。干した柿そのもの!自然な甘さと柿そのままの風味が楽しめ、後味も上品で柿本来の味わいを堪能できます。
原料となる柿の外皮を丁寧に剝いてから干され、果肉の黄色が濃く「金色」のようで見た目も非常に上品で美しい点も魅力。他の干し柿と比べて甘味が強く、果肉も柔らかく、ある程度の水分もあり、他の干し柿には無い「トロミ感」が有ります。半生タイプの干し柿ですね。
干し柿と云うと昔ながらの保存食のイメージもありますが、あんぽ柿は干し柿の中でも水分含有量が比較的多いため、あまり長期保存には向かないでしょう。美味しいうちにお召し上がりください。
干し柿の原料は渋柿
実は、干し柿の原料の柿は全て渋柿なんです。
渋柿といっても、元々は糖度は14度~17度近くまであるのです。ただ渋み成分も相応にあるため「渋柿」と言われてしまうんですね。
干して渋味と水分を抜くことで、渋柿でも甘味を強く感じる様になります。渋柿を美味しく食べるための一つの手段がこの「干し柿加工」というわけです。
干し柿はどれも一緒だと思われている方も多いかもしれませんが、実は、多種多様の干し柿が有るのですよ。乾燥の仕方、水分含有量、柿の品種、生産地等の色んな条件によって品種や商品名が変わってきます。
干し柿の原料になる渋柿と云えば、有名どころでは次のような種類と産地が人気です。
- あんぽ柿…福島県の蜂屋柿や平核無柿、山梨県の甲州百目柿、新潟県や和歌山県の平核無柿、等
- 枯露柿…山梨県の甲州百目柿、富山県の三社柿、等
- 市田柿…長野県の市田柿
- 吊るし柿(紅吊るし柿を含む)…山形県の紅柿、等
渋柿についてもっと知りたい方はこちらのブログ記事もご参照ください。
あんぽ柿以外の干し柿とは
あんぽ柿以外の干し柿の中でも人気なのは「枯露柿」や「市田柿」などが定番でしょうか。しっかり干され、干し柿の表面に白い粉(コ)が吹いているものは大体20~30%の水分含有量と云われています。
あんぽ柿よりも水分含有量が少ないですね。その分、あんぽ柿よりは食感が少し硬く感じられます。かための歯応えがお好みの方に人気です。
あんぽ柿の原料になる渋柿の品種とは
あんぽ柿に使われる渋柿と云えば、大玉系で肉厚感があり、形は釣鐘型で柔らかい果肉が特長の「蜂屋柿(別名、甲州百目柿や富士柿など)」が原料として使われます。
また、小粒で強い甘みを特長にもつ「平核無柿(ひらたねなしかき)」が原料になることもあります。
蜂屋柿
蜂屋柿とは、干し柿専用の品種です。
長楕円形の大粒で柔らかいのが特長。平核無柿より甘みが抑えられていて、さっぱりとした甘さのあんぽ柿です。
平核無柿
平核無柿とは、渋柿の代表的な品種です。果汁が多く風味が良いのが特長。種が無くて食べやすく、甘みが強いあんぽ柿です。
あんぽ柿の産地とは
あんぽ柿の主な産地と云えば、発祥の地でもある福島県が圧倒的な主力産地でしょう。
産地としては、現在のJAふくしま未来(旧JA伊達みらい)と果実専門農協のJA伊達果実(通称:だてか)が主力産地です。弊社も両JAさんとは昔から「あんぽ柿」を含めた桃などを中心に長いお付き合いをさせて頂いています。ありがとうございます。
他には、山梨県、新潟県、富山県、和歌山県などが有名産地として続いています。
福島県では12月いっぱいは「平核無のあんぽ柿」が出荷され、年末から年明けは「蜂屋柿」が出荷されます。
山梨県では一般的には甲州百目柿を使ったあんぽ柿「甲州あんぽ(蜂屋柿と同じような、肉厚感のあるあんぽ柿)」として出荷されます。山梨県はどちらかと云うとやはり同じ甲州百目柿を使ったの枯露柿の出荷も目立ちます。
新潟県や和歌山県では、平核無柿(※新潟では「おけさ柿」の名称)のあんぽ柿を製造出荷しています。
福島県の珍しいあんぽ柿
生果でも非常に珍しい柿を原料として作られるあんぽ柿もあります。
それは、福島県の会津地区で栽培されている「会津見知らず柿(あいずみしらず柿)」です。産地である福島県会津地区限定の品種である為、本当に希少性の高いものになっています。
あんぽ柿の旬の時期とは
あんぽ柿といえば「冬」ですよね。産地にもよりますが、秋に収穫した柿を干しあげるので、12月位から出回るのが主流ではないでしょうか。
暖かいコタツに入って、お茶と一緒にお茶菓子として召し上がるのは至福の時間ですねえ。
あんぽ柿の歴史とは
あんぽ柿は今から約250年以上前に現在の福島県伊達市梁川五十沢で柿の栽培が始まりと云われていますが、あんぽ柿としては大正年間に開発されたとも云われています。
ちなみに、「諸説あり」ですが…
一説によると、昔は田畑がお休みとなる冬の時期の仕事として、農家の方が手作りしていたのがあんぽ柿の始まりという説もあります。
また、「天の干し柿(あまのほしがき)」と呼ばれていたところから、「あんぽ柿」と言われるようになったとも云われています。
あんぽ柿の製造方法とは
あんぽ柿は原料となる渋柿を収穫後、外皮を剝いて、硫黄の煙で燻蒸した後で乾燥させると云う独特の製法で作られています。
※硫黄は乾燥中に揮発する為、柿に残留することは無く、全く問題は有りませんよ。
あんぽ柿を干す「連」
燻蒸後は、柿を連(れん)と呼ばれる紐に吊るして干し小屋などで乾燥させます。その光景は正に「金色のすだれ」の様で本当に感激する位美しいものです!
干している間も温度や湿度などを見ながら扇風機や送風機などでしっかり管理されます。このような努力の結果、肉厚で、柔らかく、ジューシーで美味しいあんぽ柿が出来るのです。
地域によって違いがあるあんぽ柿の製造方法
あんぽ柿の製造方法にも地域それぞれ進化しています。
和歌山県の様に平核無柿の生産量が日本一の産地では機械乾燥が進んでいるんだとか。私達も懇意にしているJA紀北かわかみでは、あんぽ柿の製造工場を新設して、製造後は冷凍処理をして年中販売できる様にしたそうです。
冷凍処理されたあんぽ柿は「冷凍あんぽ柿」として商品化し、人気を得ているそうですよ。特に夏場に、少し解凍させながらシャーベット状であんぽ柿を楽しんで頂けると大好評だそうです!夏場のデザートに最高ですね。
あんぽ柿の食べ方とは
あんぽ柿のおすすめの食べ方と云えば、やはり柔らかいまま、そのまま美味しく頂くのが好きですね。食味や食感は和菓子に近い感じがあるので、チョット渋い日本茶によ~く合いますね。
少し硬めのあんぽ柿であれば、サラダや一夜漬けに混ぜたり、細かく刻んでヨーグルトの和えたするのも良いでしょう。
あんぽ柿の食べ方をもっと詳しく知りたい方はこちらのお料理上手のスタッフが書いた記事をぜひ読んでみてください。必見の美味しい食べ方情報満載です!
あんぽ柿の保存方法とは
あんぽ柿の保存方法については、乾燥した涼しい風通しの良い場所に置いたり、冷蔵庫で保存して頂ければ有る程度の期間は保存できると思います。
ただし、あんぽ柿は干し柿と云えど水分量が比較的多い点が特長です。水分量が多いということはそれだけ傷みの可能性がありますので、やはりなるべく早めに、美味しいうちに召し上がってくださいね。
日本のあんぽ柿は東南アジアでも大人気商品!
実は、日本のあんぽ柿は海外でも大人気なんです。
中国、台湾、香港等の旧正月(春節)の時期になると、このあんぽ柿の黄金色が縁起が良いと大人気で、最近は2月に入ると特に日本国内より海外(とくに中華圏の国々)の方々の人気が高く、海外向けに大量のあんぽ柿が輸出されています。
中華圏の方々は、縁起物が好きな傾向もある様で、最近は特に人気を博していて、この時期になると国内の市場より海外向けが多いのではないかとも云われている位です。
あとがき
- あんぽ柿とは35~40%ほどの水分量を含む干し柿
- 干し柿の中でも特に甘くトロミのある食味が人気!「黄金色」の果肉も縁起よし!
- あんぽ柿は福島県が発祥の地
今回のブログではあんぽ柿をテーマに色々お話しいたしました。
あんぽ柿は冬場のおやつという印象があります。今となっては美味しいおやつが一年中手に入りますが、昔ながらの冬場の貴重な「スイーツ」とも云えるでしょう。
また、あんぽ柿の思い出話と云えば、柿を干している小屋を初めて見た時は本当にビックリしました。あんぽ柿の暖簾と云いますか、すだれと云いますか…。とにかく「黄金色」で、美しさが忘れられません。
原料となる柿が木に生っている姿も見たことがありますが、それも印象的でしたね。落葉樹なので、葉っぱが落ちてしまうのですが、丸々とした柿だけ木にしっかり残っているんです。
自然の青果物の強さのようなものを感じました。
これからも、自然の恵みをありがたく感謝の気持ちをもって味わっていきたいです。
今年もブログで様々なフルーツをご紹介致しますね。どうぞお楽しみに!
今後とも青果専門店とっておきやブログをどうぞよろしくお願いいたします。
杉本
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