皆さんこんにちは。株式会社オージーフーズが運営する「青果専門店とっておきや」の最年長青果担当の杉本です。
りんごと云えば「サンふじりんご」の名前が有名ですね。青果業界に身を置く者としては特に岩手県JA江刺のサンふじりんごに注目していただきたいです。
サンふじりんごの特長や、どうして高値になるのか、産地での栽培方法についてなどなど、詳しく深~くお話しいたしますね。りんご好きの方にぜひ読んでいただきたい情報満載です!
目次
きっと皆さんも、テレビで初物のりんごが市場で高値で競り落とされている光景を見たことがあるのではないでしょうか。りんごと云えば東北が名産地ではありますが、中でもこの岩手県JA江刺の評価はとても高いのですよ!
私自身も昔は東北の百貨店にいたこともあり、また何度もサンふじりんごの産地を訪問しています。現地で撮影した写真や動画もたくさん掲載いたしますね。深~く、わかりやすくお話しいたしましょう。
サンふじりんごとは
サンふじりんごとは、元の品種は「ふじりんご」です。
袋をかけずに栽培したふじりんごを「サンふじりんご」と云います。
ふじりんごはとても馴染み深い品種ですね。りんごと云えば赤いりんごの「ふじ」を想像する方も多くいらっしゃるかと思います。ふじりんごは全国のりんごの総収穫量の約53%をも占めているのです。
「ふじりんご」と「サンふじりんご」の違いとは
ふじりんごは栽培の仕方で「ふじりんご」と「サンふじりんご」の二種類に分けられます。
- ふじりんご…りんごひとつひとつに袋を掛ける有袋栽培。収穫の前に袋をとり、ややピンクがかったきれいな色が付きます。保存性が高いのが特長です。
- サンふじりんご…最初から収穫まで全く袋をかけず、樹上で太陽をいっぱい浴びて育てる無袋栽培。太陽光のおかげで甘いりんごが育ちます。りんごに蜜が入り易いのも大きな特長です。甘味と酸味のバランスに優れ、香り良くシャキシャキとジューシーなりんごになります。※ただし、袋をかけないため外皮にややもすると葉のスレや枝による小さな傷が若干有る場合も…。
青果販売に携わっていると、お客様から「ふじりんごとサンふじりんごって何が違うの?」とよくご質問いただきます。結局はどちらも「ふじ」で間違ってはいませんが、栽培方法が違うということなんですね。
ちなみに、江刺のふじりんご…と云うのは私は聞いたことがありません。
もっと詳しく「ふじりんご」と「サンふじりんご」の違いを知りたい方は、こちらのブログ記事をご参照くださいませ。より深く解説しています。
岩手県JA江刺のサンふじりんごの最高値はなんと一箱130万円!!
2018年11月10日(土)だったと思いますが、岩手県の盛岡中央卸売市場で、県内の奥州市にあるJA江刺のサンふじりんごのトップランク「特撰」の一箱28玉入がなんと過去最高値と同額の一箱130万円で落札されたのです!!
一箱に28玉ですから、一玉当たり約46,000円もするんです。
りんご一玉で46,000円ですよ!驚きすぎて、あまり信じて頂けないかもしれませんが…(笑)
実は、2017年も同じ価格が付いていました。昨年購入された方も、今年購入された方も、ともにによく知っている方でもありました。
動画で見る!岩手県のりんご初競りの様子
私も弊社のスタッフと何度か初競りに立ち会ったことがあります。その時に動画を撮影しましたので、こちらもぜひご覧くださいませ。会場の空気が伝わりますか。
会場の熱気と期待はそれはもう凄いですよ。年に一度の一大イベントです。
JA江刺のサンふじりんごここ5年間の初競り価格(特撰28玉詰)
- 2018年…130万円/一玉当たり約46,000円
- 2017年…130万円/一玉当たり約46,000円
- 2016年…120万円/一玉当たり約42,000円
- 2015年…100万円/一玉当たり約35,000円
- 2914年…100万円/一玉当たり約35,000円
ここ5年間、毎年「特撰」は一箱100万円以上の値がついています。
国内に幾つものりんご産地が有りますが、この様な目玉が飛び出るほどの競り値がつくりんごはこのJA江刺のサンふじだけと云えますね。
そうそう、初競りの価格が盛り上がる高級フルーツといえば「マンゴー」もありますね。ご祝儀価格とも云われますが、やはりあの盛り上がりは風物詩として欠かせません。
初競り会場でいただいた記念品りんご「箱入りむすめ」
私が競り場を訪問した際に、記念品としてこんなかわいいりんごを頂きました。ありがとうございます。小さな箱に入ったりんご「箱入りむすめ」です。
持ち帰って、ちょうど同時期に元社員の結婚式にお呼ばれしていたため、花嫁さんに贈り物としてこのりんごをお渡ししたらとても喜ばれた思い出があります。
江刺のサンふじりんごと私の思い出
今から約20年前、私は盛岡市内に有る当時県内唯一の百貨店とも云われた「川徳」の青果売り場を統括する立場にありました。
この江刺のサンふじりんごは20年前でも評判が非常に高く、20年前の初競り価格は20万円ほどだったと記憶しています。それを数年にわたって購入していたのが私なんです。40代前半の頃でしょうか。現場でバリバリ働いていましたよ。
最高値で競り落としたりんごは川徳の店頭に飾って販売しました。たしか価格は一玉5,000円くらいで…。この価格設定は利益が出ないものでしたが、このリンゴを販売することで県内のTV局、ラジオ局、新聞社、マスコミ各社がこぞって取材に来てくれて、結構な宣伝になったものです。
競り落とすのは大変でも、その後JA江刺のサンふじりんごを販売する際には良いアピールになりましたよ。「後で儲けを出してくれるりんご」と云う事で、とても大事な商材でした。
今でも色んなマスコミ各社の注目を集め、TV局は全国版のニュースでも紹介されますし、最近はそれに加えてインターネットでもどんどん紹介されますので、いつかまた機会があればぜひ競りに挑戦したい…と思っているところです!?
岩手県JA江刺のサンふじりんごの栽培方法
皆さんは岩手県産のリンゴと云ってもピンと来ない方も数多くいらっしゃるのではないかと思いますが、実はリンゴの生産量では青森県、長野県、山形県に次いで全国第4位の生産量を誇っています。
その中でもJA江刺(えさし)、の特徴はなんといっても、古くから大型のリンゴ園が多く、又すべてが「矮化栽培(わいか)」を行っています。
その為、このリンゴ園を良く「リンゴ団地」と表現しています。
動画で見る!岩手県JA江刺のサンふじりんご園
江刺の気候はりんご栽培にぴったり!
又、リンゴを栽培するのに大事な気候条件としては、昼夜の寒暖差にも恵まれており県内を流れる北上川が育んだ肥沃な土地と豊かな水にも恵まれています。
矮化栽培とは
矮化栽培(わいかさいばい)とは・・・リンゴの樹の高さを抑えてコンパクトに作り、枝を横に広げて樹間を広く取り(通常は3mと云われているが、当地では約5m幅をとっている)作業用の機械が園内に入り易く、又作業し易くして手を掛けて、太陽の光をいっぱいに受ける様に栽培する方法の事です。
江刺のサンふじりんごの品種の特長
JA江刺のサンふじの特徴のもう一つとしては、フジの中での品種にも有ると思います。ふじには大きく分けて2種類あります。
一般的には「縞ふじ」と「ベタふじ(茶っ系)」の2種類が中心です。
どちらかと云えば「縞ふじ」の方が良くみられます。一方「ベタふじ」の方はどちらかと云うと比較的限られた産地で栽培されている事が多くあります。
縞ふじの特徴は、外皮に少し縦じまが有る様に見えます。色はやや赤目色になっています。「ベタふじ」は外皮全体が赤黒い色で、どちらかと云えば黒っぽく見えるかもしれません。その上に白い斑点状のが多くみられるのが特徴です。
味の点からいうと、正直どちらも特に変わりはないのですが、見た目のインパクトとしては「ベタふじ」の方が有ると思います。
JA江刺では「縞ふじ」「ベタふじ」のどちらも栽培していますが、初競りに出る品種はやはり「ベタふじ」の方です。
私的には江刺のサンふじのイメージとしてはやはり「ベタふじ」でしょうか。
収穫とその後の作業
リンゴの生育時には、当然の様に摘果や玉まわしをして出来るだけ万遍なく太陽光を浴びる様にして真っ赤に着色させます。
色が濃くなることで、強い甘味と程よい酸味、そして豊かな香りと瑞々しさ、歯触りの良いしまった「サンふじ」になります。
収穫後は大型の選果場に運び込み1個ずつ輪に乗せて「光センサー(内部品質センサー)」で瞬時に「糖度」「酸度」「蜜入り」「熟度」「内部褐変(ないぶかっぺん)」の5項目と「硬度」「サビ」の有無を見極めて等階級を決定します。
後はコンベアーを流れ、箱詰め、箱積みなどは全てロボットで対応しています。
糖度も一般的な基準で行くと14度前後が中心となります。
一般的な市場向けは先程のロボット対応ですが、3㎏詰などの特注品は手作業で行っています。
JA江刺で栽培されている他の品種のりんごとは
JA江刺のサンふじは、初競り以外の時でも高い評価が有るので常に全国でもトップ
クラスの高額商品になっています。そうは言っても初セリの様な100万円を超える様な事は有りませんが、市場では10㎏詰でも万単位はざらに出てきます。
JA江刺しでは「さんふじ」以外ではどんな種類のリンゴが生産されているかを見ると。昔から良く言われていたのは「ジョナゴールド」で、時間が経つと表面に油状の物が見られることが多い品種でしたが、江刺のジョナはモノが他産地のジョナとは全く異なっていました。
又、最近の品種として黄金色っぽい(黄色系)「シナノスイート」こちらは貯蔵性が高いので、今後は年明けに多くみられるのではないかと思っています。
もう1種類も同じく黄金色系「はるか」等が有ります。こちらは黄金色系にも拘らず蜜入りのうえ食感にも優れ、しっかりと食感を感じる事が出来ますここの産地の黄色いリンゴは日持ち実よく今後に期待が持てる種類ですよ。
ちなみに、品評会に出てくるだけの高級な黄色いりんご「金星」というりんごもありますよ。
江刺サンふじのNO1の販売店は?
先程来、JA江刺のサンふじの凄さをご案内してきましたが、この商品の一番の取り扱いの多い店舗としては、やはり県内の唯一の百貨店の「川徳」が上げられると思います。この店舗では11月の中旬位になると毎年恒例の「えびす講」云う催事が行われます。県内の各市町村(特に三陸海岸の宮古市、釜石市、大船渡市等や、内陸の一関市、花巻市、奥州市、遠野市、北上市等々から「川徳」の外商部の人たちが大型バスをチャーターしたり、各自車で盛岡市内のこの店舗に集まってきます。その為に店舗周辺では「えびす講渋滞」と云う渋滞が発生して、ラジオやTVでもニュースになる位の大型催事なんです。
この催事の時に合わせる様にして「江刺のサンふじ」の前予約の注文を受けますが、この数量が半端ない位の数量ですし、当然売上高も桁違いの売上を上げる催事になっています。一説によるとこの時期にお歳暮を含めて受けた数量が10,000箱超えるとも云われている位凄いんです。
りんごの名産地で耳にした「りんご笑い話」
私が東北地区を担当していた時に、翌耳にした言葉が有ります。
それは、リンゴのついての話ですが、青森県と岩手県ではリンゴに対する対応が
県民性なのかリンゴの生産量や価格の違いなのか判りませんが、とても興味を引いた話です。
本当かどうかは定かでは有りません。あくまで社会通念の中で云われている言葉です。
「リンゴは青森県では買うものでなく貰うものである。岩手県ではリンゴは買うものである。」共云われる事を聞いたことが有ります。
これは青森がリンゴの生産量が他を圧倒する生産量を誇っているからと、岩手は生産量は第4位では有るが、青森とは余りにも量的に異なる事や「江刺リンゴ」を中心にして、お歳暮時期に人気を博しているからではないかと推測します。
かと言ってリンゴの売上は青森では12月のお歳暮では圧倒的金額を残しています。もちろん岩手、山形、秋田なども一般的にはリンゴの進物が多大な売上を上げている事は間違いありません。
あとがき
私も以前全国の百貨店に青果専門店として出展している会社でも、盛岡を含む東北地区の百貨店を担当していた時は、1か月最低1回は各店舗に行っていましたが、その中でも盛岡店は特に思い入れが有りました。
冬場に盛岡の市場に顔尾を出す時にはいつも吹雪だったり、大雪の時が多かった為“嵐を呼ぶマネージャー”と呼ばれていました。
その会社を退社後、今の「とっておきや」の仕事をさせて頂いていますが、「とっておきや」でも11月の企画として「JA江刺のサンふじ」を取り扱っております。
本年は残念ながら既に終了してしまいましたが、皆さんもこれを機会に是非一度でもこの江刺のサンふじを召し上がって頂けたらとても嬉しいいです。
実際私も個人的に、お世話になったお客様にこの“江刺のサンふじ”をお歳暮で使っております。届いた先の方々はやはりかなり強いインパクト(見た目(皮の色、蜜入りの具合、香り、食味、食感、等全てにおいて)を感じて頂いています。
皆さんにも是非このインパクト感を共有して頂きたいです。
処で皆さんはリンゴ、特にサンふじは何処で購入されていますか?
地元のスーパー、八百屋さん、デパート、高級果実専門店又は通信販売でしょうか。
購入する際は何を基準に決められますか? 価格、大きさ、色付き、産地等どこまで
意識したり、こだわってお買い上げされますか?
秋から冬場にかけての代表的な果実と云えば、「みかん」を含む柑橘類、「リンゴ」「苺」一部生果・干しも含めて「柿」が有りますが、今日はリンゴについてご紹介いたしました。
杉本
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