皆様こんにちは。青果専門店とっておきやを運営するオージーフーズの最年長青果担当スタッフの杉本(66歳)です。
フルーツ好きな皆様にご紹介したい、秋のとっておきの逸品「陽豊」という名前の柿について詳しくお話しいたします。
陽豊柿の産地である岐阜県で撮影した写真や動画もたっぷり掲載いたしますね。柿好きの方、珍しい果物を知りたい方、ぜひ知っていただきたいとっておきの柿情報満載の記事です!
目次
幻の柿「陽豊」の特長とは
陽豊柿の味の特長
チョット大袈裟ですが、個人的には陽豊柿ってある意味、甘柿の最高峰にランクされる柿ではないかと思っています。何故なら、陽豊柿は甘柿の2大人気品種の「富有柿」と「次郎柿」の掛け合わせから生まれた品種なんです。
「富有柿」からは濃厚な甘さと肉厚感、「次郎柿」からは甘さはもちろんですが適度な歯応えを受け継ぎ、尚且つ、適度な柔らかさも併せ持っている贅沢な甘柿です。
正に甘柿のエリート中のエリートと云える柿です。
又、富有柿と比べると果皮の色が濃い紅色をしていて、まるで夕焼けを思わせる様な色の濃さがこの柿の特徴でもあります。ですから、この陽豊柿は別名「赤柿」とも云われている位です。
「甘柿」とは何ぞや?と気になった方は、こちらのブログ記事もご参照いただくと柿知識がグッと深まりますよ。
陽豊柿は「ほぼ」種無しで食べやすい!
又、甘柿は一般的に多くの品種で見られるのは「種有り」ですが、この陽豊柿は他の品種とは異なり、「種無し」の傾向があります。
品種として種無しと銘打っている訳ではないので、種が入っている場合もあります。ただし、たまたま種があっても1粒か2粒程度で指でつつくとポロッと取れますよ。
非常に食べ易くもなっているのも人気の秘訣ですね。
陽豊柿の糖度は
陽豊の品種の特性として、糖度は凡そ17~18度位あると云われています。
実際、陽豊柿は完熟するとそれ以上の熟度になることが多くあります!「甘ぁ~い柿が食べたい」と云う方にはぜひ一度お召し上がりいただきたい。豊かな甘さをご堪能いただけます。
陽豊柿が旬を迎える時期はいつ
陽豊柿の旬は、だいたい11月上中旬~12月上旬頃です。
収穫期間も短く、その時期くらいにしか市場でも見かけることができない珍しい品種です。毎年陽豊柿を見かけると「もうそろそろ年の瀬だなぁ」と実感しますよ。
陽豊柿の歴史
陽豊柿は1991年11月に品種登録された柿です。
品種登録されてから既に27年もたっているんですね。現在は品種登録の育成権も消滅しており、全国各地で栽培の取り組み始めているようですが、中々生産量が増えてはいないようです…。
私がこの陽豊柿について産地の方から聞いた話ですと、柿の名産地として名高い岐阜県が他県との違いを出すために、富有柿を超える柿として県内での栽培を奨励したのが始まりなんだとか。
ですが、栽培上の諸問題や、長く樹にならすことのリスク等々、なかなか生産量が増えない状況が続いた為、多くの農家さんは昔からの富有柿栽培に舞い戻ってしまった…なんて話も聞いたことがあります。
それほどまでに栽培が大変な柿ということですね。
現在県内では岐阜県のJAにしみの管内で殆どが栽培されていて、凡その生産量は12トン位しかありません。この量はJAにしみの管内の柿の生産量の約6%位に相当します。それ位、非常に希少な品種なんです。
そして、この12トンの陽豊柿の殆どが東京の有る一市場にだけ出荷されているのが現状です。ですから、その先の販売先は当然限定されているのが現状です。だからこそ「幻の柿」と云われる由縁だと思っています。
陽豊柿の収穫量が一番多いと思われる名産地のJAにしみのでさえこれ位しか出荷量がないので、まして個人農家さんで収穫される量は、当然もっと少なくて当たり前です。
最近では、柿の農家さんの中でも特に篤農家と呼ばれる方々の間で個人的に栽培して、インターネットなどで直接販売されているのを何度か見たことが有ります。
陽豊柿の産地と生産者の皆様
陽豊柿の主力産地は岐阜県のJAにしみのと云う農協で、その中でも主に南濃町と養老町が中心です。この産地のJAにしみのは岐阜県の大垣市を含む広範囲に展開しているJAです。
陽豊柿の産地の南濃町と養老町は、どちらかと云うと愛知県と三重県に隣接している県境の山地に位置しています。この地へ行くには、大垣で新幹線を降りて車で行くか、名古屋(愛知県)経由近鉄で桑名(三重県)から養老鉄道で南濃町吉田という所まで行く方法が有ります。
JAにしみの管内での柿農家さんの数は約160件ほどですが、その内で陽豊柿を栽培している農家さんは約23軒程しかありません。
この産地(南濃町、養老町が中心)の特長は、養老山脈からの湧水が揖斐川(いびかわ)に流れ込む、谷沿いの扇状地に連なる土地です。園地は太陽をたっぷり浴びることが出来る南向きで、水はけのよい傾斜地に有るので味の濃い柿が育ちます。
とっておきや産地訪問動画【岐阜県陽豊柿】2017
陽豊柿の栽培方法について
陽豊を栽培している産地の柿農家さんにお話しを聞いたのですが、やはり陽豊の栽培はとても手間がかかるようです。
生産者の皆様の並々ならぬ努力と自然が与えた良い環境のおかげで美味しい陽豊柿を堪能することが出来ます。本当に生産者の皆様ありがとうございます。
高い技術力が必要とされる摘果と剪定の作業
陽豊柿は「比較的大玉で、着色が良く濃い紅色」と云うのが特長であるため、摘果や丁寧な剪定の作業が必要になります。
この剪定作業には高い技術が必要なため、JAの熟練した技術指導員が各農家さんを廻り、きちんと技術指導をして品質を保つ様にしています。
- 摘果(てきか)…小さな実、傷の有る実、陽が当たりにくいところにある実を採り除く作業
- 剪定(せんてい)…樹に成る果実に、まんべんなく陽が良く当たる様に枝を揃える作業
樹上で完熟させる難しさ
元々、柿は「桃栗3年、柿8年」と云われる位、成木になって実をつけるまで比較的時間のかかる果実です。
そして、陽豊はすぐには収穫できません。樹に成らせた状態で熟度を上げるという特長があります。樹上で熟させることで、陽豊柿の特長の外皮の濃い紅色が実現するのだそうです。
実が大きくなって、ようやく収穫できるようなっても、掛け合わせの片親の「富有柿」より2~3週間程長く樹上で栽培しなければなりません。
ただし、長く樹に成らせておくと云うことはリスクが高まるのです。
樹上で色が着き果肉の熟度が上がってくると、動物に狙われてしまうのです。やはり動物は野生の勘で美味しい果実を嗅ぎ分けるんですね。
樹上で熟度が上がれば上がるほど、鳥に狙われる比率が高くなってきます。鳥は果実を完食するわけではなく、身の一部だけかじっては次の実にと行ってしまいます。ほかにも、野生のイノシシやサルが圃場へ侵入する可能性があるのだとか…。
野生の動物が圃場の中に一旦入ってしまったら、もうそれは悲惨な結果に終わってしまうのが分かります。
片一方で「柿」の順調な生育を見守りながら、又片一方では動物による被害を未然に防ぐ様に育てなければなりません。これが結構大変とお聞きしています。
陽豊柿の名前の由来
「陽豊柿」と云う名は正に的を得ていると思える名前です。
元々は開発先での登録番号は「かき農林4号」と云いますが、正式品種名は農林水産省で決定した「陽豊柿」です。
太陽の光がたくさん当たる栽培環境の中で濃い紅色に仕上がった柿は、正に「陽」が「豊」かな「柿」の名前で呼ぶのにふさわしい品種だと思います。
どうぞ皆さん、この陽豊柿の名前を覚えてくださいね。
陽豊柿の栄養価とは
柿は昔からの格言で「柿が赤くなれば医者が青くなる」と云われているほど、栄養価が高いと云われています。
一般的に、柿はビタミンAやビタミンCが豊富にふくまれており、特にビタミンCはミカンの2倍も有るとも云われています。
秋から冬にかけて一段と寒くなり、風邪を引きやすい季節になってきますので、ちょうどその頃に旬を迎える柿を食べましょう!
私と陽豊柿との出会い
おかげさまで私はこの青果販売業を40数年ほど経験しておりまして、東京都内にある百貨店の青果専門店で店長やバイヤーなども経験させて頂いた事も有ります。
「杉さんは市場へ行くのが趣味」と云われるほど数十年も青果市場へ出入りしていますが、この陽豊柿を教えて頂き試食した時の感激は今でも忘れる事が出来ないくらいです。
もともと柿好き人間ではありましたが、「こんなに良い柿があるのか!」と衝撃を受けましたね。本当に、大きい!赤い!甘い!の三拍子が揃っている柿です。
もちろん市場だけでなく、産地へ直接訪問して、生産者の方々にはとてもお世話になっております。美味しい柿をご提供いただきありがとうございます。
今年も陽豊柿が出る時期が待ち遠しいです。首を長~くして待っています。
あとがき
今回のブログ記事では、岐阜県のとっておきの柿「陽豊」についてご紹介いたしました。陽豊柿の魅力を皆様にお伝えできていたら幸いです。
- 陽豊柿とは、岐阜県のJAにしみので栽培されている柿
- 大きい!赤い!甘い!の三拍子が揃った美味しい甘柿
- 栽培が難しく、流通量が少なさから「幻」とも云われる珍しい柿
私は結構「柿好き」な人間なのです。もちろん他の果実も好きですが、私にとって柿はちょっと別格な存在ですね。
その柿の中でも、甘柿の代表品種の「陽豊柿」と渋抜きの「紀の川柿」は本当に大好きです。この2品種はまだあまり市場にも出回らない希少な品種で、一度食べたらもうビックリ!あまりの美味しさに感動すること間違いなしの一押しの柿ですよ。
今年は台風の被害が出ていて、例年よりも更に収穫量が減りそう…と云う情報もあるようです。そうなってしまうと益々「幻」の柿になってしまわないかとても心配しています。
今年も、大きく、赤く、甘い陽豊柿がたくさん出荷されることを切に祈っています。
今日もブログを最後までお読みいただきありがとうございます。
これからも旬な青果物の話題、まだまだ希少な「知る人ぞ知る」青果物の話題をお届けいたしますね。どうぞお楽しみに。
今後とも青果専門店とっておきやをどうぞよろしくお願いいたします。
杉本
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