皆さんこんにちは。株式会社オージーフーズ通販事業部が運営するオンラインショップ「とっておきや」の最年長青果担当の杉本(2019年12月時点67歳)です。
冬の柑橘「伊予柑(いよかん)」について詳しくお話しいたしましょう。伊予柑と云えば、みかんと並んで冬の代表的な果物として人気の柑橘ですね。品種の特長、お味の特長、産地について、ひとつひとつ詳しく丁寧に解説いたします。
目次
伊予柑とは
伊予柑のお味の特長
伊予柑は果肉がジューシーで柔らかく、甘味酸味のバランスが良く、濃厚な味わいをもつ柑橘です。果汁たっぷりですね!
また、中でも一番大きな特長はとびきり良い「香り」を豊かに感じる事が出来ます。柑橘類の中でも特に香りが評判で「香りいよかん」とも呼ばれています。なんともいえない爽やかな柑橘の香りにファンが多い品種です。
又、いよかんは似た柑橘の「不知火(しらぬい)」と同様に高糖高酸(こうとうこうさん)の特長をもつ代表的な柑橘です。
お客様のお手元に届く頃にはしっかり酸が抜かれ、ほどよい甘味と酸味をご堪能頂けますよ。
高糖高酸
我々青果業界では、柑橘類の中で元々糖度も高いが、クエン酸度も高い状態のものを「高糖高酸」と云います。
こう云った柑橘類は生育時にはもう高糖高酸の状態になるようで、酸を抜くために収穫後はまず貯蔵庫で一旦しばらく貯蔵されます。品種によっては数週間から数ヶ月の時も有るほどです。貯蔵庫で糖度と酸度のバランスを取ってから、箱詰め等をしてようやく出荷されます。
ちなみに、不知火とはあの「デコポン」の元々の品種名のことです。
収穫後、貯蔵庫で酸を抜いて、光センサーで糖度と酸度をチェックされます。糖度13度以上を目安に、クエン酸度を1.0以下のものだけが「デコポン」の名前を付けることが出来ます。
詳しくは下記記事をご参照くださいネ。
伊予柑の皮の特長
伊予柑の表皮は艶の有る濃い橙色で、皮はやや厚めですが比較的軟らかめで、手でも剥ける程の剥きやすさです。
※類似する柑橘の八朔や甘夏は表皮が硬いため、ナイフなどで少し切り込みを入れてから皮を剥くようになります。
伊予柑の歴史
伊予柑は、この名前が示すように伊予の国(現在の愛媛県)が発祥の地と思われがちですが…、実は、愛媛県の海(瀬戸内海)を挟んだ山口県萩市で明治時代に発見された柑橘なんです!!
その当時の産地名の「穴門(あなと)」にちなんで「穴門蜜柑(あなとみかん)」と呼ばれていたと云う歴史をもっています。
その後、海を渡って、現在の愛媛県松山市を中心に徐々に広がり、それから「伊予の国(現在の愛媛県)のみかん」から「伊予柑(いよかん)」と呼ばれるようになりました。
現在は愛媛県内ほぼ全域で栽培される名産柑橘に成っています。
伊予柑の種類とは
今、一般的に「伊予柑」と呼ばれているのは「宮内伊予柑(みやうちいよかん)」と云う品種です。
宮内いよかんは1995年(昭和30年)に愛媛県松山市平田町の宮内義正さん宅で伊予柑の枝代わりが発見され、それが全国に広まりました。今では国内の殆どの伊予柑の産地で栽培されているのがこの宮内伊予柑です。
宮内伊予柑の特長は、従来の伊予柑と比べて成熟が早く、実の付き方も良く、表皮が薄く酸味が少なく食べやすい品種です。この栽培のしやすさと食べやすさが評判となり、全国的に普及が進んで主力の品種になりました。
他には、以前は「勝山伊予柑」や、見た目がつるつるの表皮の「大谷伊予柑」等が有りましたが、最近は殆ど見かけなくなりましたね。
伊予柑の旬の時期はいつ
伊予柑の旬の時期は1月から3月頃と云われています。
まず第一に、九州地区の早い産地では毎年12月中旬位から市場入荷が始まって来ます。
その後、1月から3月にかけてレギュラー(一般的な宮内伊予柑)と、「蔵出し伊予柑」というこだわり品が市場に並びます。
それから3月以降、こだわりの宮内伊予柑の「弥生紅伊予柑(やよいべにいよかん)」が出てくるようになります。
この弥生紅伊予柑とは、宮内伊予柑を長期保存して酸をしっかり抜き、3月に入ってから出荷が始まる商品です。大体4月中旬頃までが出荷時期としてみています。
いよかんの産地とは
伊予柑は全国でも栽培されていて、全国の収穫量は約26,980t(平成29年度)あり、その内でも愛媛県で収穫される量は約25,211tと云われ、愛媛県だけで全国の約93%の収穫量を占めています。圧倒的ですね!
愛媛県以外では、和歌山県、佐賀県、山口県、静岡県等が続いていますが、収穫量は2桁以上も違っています。
ちなみに、伊予柑の収穫量は平成3~4年頃が全国的にもピークだったそうで、全国でなんと約230,000t余りを記録したとのこと。現在はピーク時に比べて約9割弱も減少しているそうですよ。
伊予柑の生産量一位の産地「JAえひめ中央」
愛媛県内でも特に有名な産地として「JAえひめ中央」さんが挙げられます。
伊予柑の生産量は約15,163tもあり県内の約60%以上を占めており、全国的に見ても約56%のシェアーを誇っています!!
このJAえひめ中央は昔から「伊予柑と云えばJAえひめ中央、JAえひめ中央と云えば伊予柑」と云われている位、いよかんではたいへん有名な産地です。
JAえひめ中央さんは元々約20年前に、伊予柑のブランド産地と云われていた松山市内の温泉青果と中島農協の他に伊予園、北条等の産地が合併して出来た農業協同組合さんです。
質、量、共に日本一の伊予柑の産地であり、現在では「JAえひめ中央さんの出来一つで国内のいよかんの相場を左右する」と云われる位の産地規模になっています。
又、こちらの農協さんでは伊予柑に携わっている生産者さんは現在約2,000人弱ほど(平成29年)と云われていますが、今から約10年前位には、約3,000人以上の生産者が居ました。ここ数年で1,000人以上の生産者さんが減ってしま居るのが現状です。
それでも、一つの品種に生産者さんが2,000人近くもいる農協さんって全国でもあまり聞いた事が無い位の凄い規模なんですよ。
JAえひめ中央加工部
JAえひめ中央さんには「加工部」という部署があり、農協内で生産される果実を使ってゼリーや飲むゼリー等の何種類もの果実加工品を自前の工場で製造販売しています。
特に有名なのが、いよかんゼリー(レギュラーサイズは125gサイズ)です。
他には、ブドウ、レモン、桃、みかん、キーウィー、ゴールドキーウィ、ブルーベリー、パイン、青りんごの果実以外にミニトマト、等が有ります。
又、他には愛媛県のオリジナル品種で生果でも大人気のアノ「紅まどんな」や「甘平(かんぺい)」等もゼリーや飲むゼリーで販売しています。ここにしかない商品です!
このゼリー類は基本的には市場を中心に卸しているので、市場を通してお店での販売になります。もし見かけたらぜひチェックしてみてくださいネ。最高の素材を使っていますから、お味も抜群ですよ!!
青果部長のイチオシ伊予柑「蔵出しいよかん」について
弊社ではもう10年以上前から、JAえひめ中央さんの「蔵出し伊予柑」を中心に販売させていただいております。
この「蔵出し伊予柑」は基本的に11月度に行われる生育調査で合格した園地で栽培される伊予柑のみが「蔵出し伊予柑」として出荷されます。
※この生育調査では伊予柑の熟度や糖度、圃場(園地)の状況も含めて念入りにチェックされますよ。
又、収穫後、以前は白壁の蔵で貯蔵して酸を抜いてから出荷していたという由縁で「蔵出し伊予柑」と云う商品名が付けられたと聞いています。
つまり、「蔵出し伊予柑」は生産者さん、栽培されている地区、個別の園地、実の生る場所、収穫時期、貯蔵場所、選果、選別、全てにこだわったとっておきの美味しい伊予柑というわけですね!
当店のフルーツギフト券で選べる「蔵出しいよかん」は特にこだわった逸品!
この「蔵出し伊予柑」はとっておきやのフルーツギフト券3500円コースで引換することが出来ます。※フルーツギフト券の詳細については下記リンクをご参照くださいませ。
https://totteokiya.com/?pid=143333370
実は、当店からお届けしている「蔵出し伊予柑」は、一般的な蔵出し伊予柑に比べてもっとこだわった超とっておきの伊予柑なのです!
どんな処が違うのかをご説明いたしましょう。
産地と生産者さんのこだわり
先ほど生産者さんの数についてご説明いたしましたが、いよかんの生産者さんの全体数がだいたい約2,000人弱(平成29年度)で、その内でも蔵出し伊予柑の生産者さんは約85人に絞られ、さらに弊社のとっておきの「蔵出し伊予柑」は前述の平田地区にも並ぶ優良産地の一つでもある潮見(しおみ)地区の中から8人の優良生産者さんに限定して出荷をお願いしています!
絶品の蔵出し伊予柑をご提供頂き、産地の方々には感謝の気持ちでいっぱいです。本当にお世話になっております。ありがとうございます。
栽培上のこだわり
いよかんは高糖高酸の為、本来は平地の保水性の高い立地を好む習性が有ります。
しかし、この生産者さん達の圃場(園地)は、時にはとんでもない位の傾斜地で、立っているのも大変な場所で伊予柑を栽培している方もいらっしゃるんです!
この様な急傾斜地の圃場(園地)は、本来で有れば元々はみかんの好適地(水ハケが良すぎる為)で有って、伊予柑には向かないはずですが、生産者さん達の技術と施設(スプリンクラー等での潅水等)で特に美味しい伊予柑が出来る様に皆さんが努力を尽くしてくださっています!
また、生産者さん達には、出来るだけ樹の外側で太陽の光をいっぱいに浴びて育った、いわゆる「外なり」の物をお願いしています。
収穫について
一般的に伊予柑は早いもので11月下旬頃から収獲が始まり、一旦貯蔵した後、12月中下旬頃から出荷が始まります。
弊社のとっておきの「蔵出し伊予柑」の生産者さんは、例年は12月いっぱいは収穫せず、年明けに収穫を開始するパターンでしたが、ここ数年来の天候不順によって、現在は仕方なく12月下旬頃から収獲を開始する様になってきました。
それでも、一般的な伊予柑に比べて約1ヶ月も長く樹上で熟を上げてから収穫をする様になっています。
貯蔵について
収穫後は、生産者さんにもよりますが白い土壁の土蔵(いわゆる「蔵(くら)」と呼ばれていますね)の中や、大きな貯蔵庫(温度、湿度を管理できる大型冷蔵庫的な施設)でしっかり酸を抜いて、糖酸のバランスが良くなった時に出荷をします。
選果選別について
貯蔵後に出荷時期が近づいてくると、今度は生産者さん達が丁寧に選果選別してから箱詰作業を行います。
例えば、一般的な伊予柑は収穫後はしばらく貯蔵した後、大型の選果場にて洗浄し、その後乾燥させ、ワックス掛けて磨き、きれいにお化粧して選果機上を転がり、規格先の箱に落ちて行きます。その後、箱詰めが終わると市場や店舗に向って出荷されます。
一方、弊社の「蔵出し伊予柑」については、一般的なものの工程とは大きく異なります。
収獲された伊予柑は蔵や貯蔵庫で貯蔵され、糖度と酸度のバランスがとれる頃になると生産者さん達は伊予柑1個1個を丁寧にブラッシングして表皮についている汚れやキズ、ほこりなどを落とし、1個1個を手作業で磨いています。
その結果、このとっておきの「蔵出し伊予柑」は、一般的なものとは大きく異なり、完熟していて手選別で厳選されたノーワックスの美味しい絶品伊予柑に仕上がっています!
ノーワックスの伊予柑なので、表皮も無駄なく使えますよ。伊予柑ママレードを作ってみたり、お風呂に入れて香りを楽しんで頂けるようになっています。
伊予柑のおすすめの保存方法とは
元々いよかんは貯蔵性が比較的高い柑橘ではありますが、出来るだけ風通しの良い処で保存して頂くと長く楽しめます。
真冬の果実だけに、暖房が入る室内であれば乾燥しないように袋などに入れてから冷蔵庫で保管してください。
美味しいいよかんの選び方
美味しいいよかんの見分け方のポイントをご紹介いたしましょう。
- 出来るだけヘタの部分が小さめ(柑橘全体にいえる事かもしれませんネ)
- 皮に有る程度張りと艶がある
- 色が濃い橙色
- 手に持った時に形がより扁平で、ずっしりと重みを感じるものがものの方が果汁が沢山詰まっている傾向があります。
一見、扁平の玉の方が小さく思われがちですが、甲高(縦長)のものよりは、実は計量してみると扁平の方が重量が重い!な~んて事が多くみられますよ。
伊予柑の美味しい食べ方
伊予柑は晩柑類の中でも甘夏や八朔、サンフルーツ等と違って比較的表皮が柔らかい事もあって、手で皮を剝くことが出来る柑橘です。
伊予柑のお尻の方から指を入れると簡単に皮が剥けます。その後、房をバラしてじょうのうを中心側から開く様に剝いともう食べる事が出来ます。
伊予柑の四方山話(よもやま話)
以前、私が都内の某百貨店のフルーツショップにいた当時は12月上旬頃からハウス栽培の伊予柑から始まり、3月いっぱい頃まで販売していました。
そこで毎年必ず産地と連携して試食販売を行うことが風物詩でした。その試食販売の時には、必ず各共選場推薦の「いよかん娘」というキャンペーンガールが来てくれて、試食販売を華やかに盛り上げてくれました。
また、販売のピーク時になる1月下旬から2月上中旬頃はちょうど大学入試の時期でもあるため、受験生向けに合格祈願として「愛媛のいよかん、いい予感」というキャッチコピーを謳ってTVCMを流していたこともありました。
最近は殆ど聞いていませんが、懐かしいですね。
あとがき
冬になると柑橘類が食べたくなりますね。
「こたつにみかん」は日本の文化だと思います。ぜひ、みかんと一緒に伊予柑もお楽しみください。ジューシーな果汁たっぷり、爽やかな香りは伊予柑ならではです。
伊予柑を食べるならJAえひめ中央さんの「蔵出し伊予柑」が絶対にお奨めですよ!
伊予柑のシーズンはこれからですから、ぜひこの冬を「蔵出し伊予柑」デビューの年にしてください!!
ではでは、本日もブログを読んでくださってありがとうございます。
これからも青果に関する情報満載で記事をアップします。どうぞお楽しみに。
杉本
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