皆さんこんにちは! 青果専門店「とっておきや」の最年長青果担当(66歳)の杉本 です。
今回は、前回に引き続き皆さんの大好きな柑橘についてご紹介します!
今回、詳しくご説明させていただくのは「せとか」です。
皆さんこの名前を聞いたことがありますか? または、お店でご覧になったり、召し上がった事はあるでしょうか。
目次
希少な柑橘!「せとか」について
実は、市場関係者で直接果実の担当やバイヤーでも、果実担当者以外だとまだまだ知らない方々も多いと思います。
ですが市場では、愛媛県産限定品の「甘平(かんぺい)」や「紅まどんな」と同様に年々人気上昇中の柑橘なんです!
せとかの「甘平(かんぺい)」「紅まどんな」との大きく異なる点は、愛媛県限定ではなく、”全国の柑橘の産地で現在栽培されている新柑橘類”というところです。
主な産地を見てみると、愛媛県、佐賀県、和歌山県、長崎県、広島県と続きます。
そのほどんどが、国内でみかんを中心とした柑橘類の主力産地となっています。
その中でも、やはり、愛媛県は”せとかの総収穫量の70%(約4,000トン位:1トンは1,000kg)”のシェアを誇っています。
柑橘全体を見ると、生産者の高齢化や自然災害の被害等の条件から、毎年減反を強いられている現状で、前年比24,410トンも減少している中で、なんと「せとか」は前年比で168トンも増えているのです。
現状の数値で見ると、全国の柑橘類で「せとか」の占める割合は約1,3%(100個の柑橘の中で1,3個相当)です。
最大産地の愛媛県でも、県内柑橘の総収穫量の約4,3%(100個の柑橘の中で4,3個相当)のみが現状です。
それくらいまだまだ希少な柑橘といえるでしょう。
「せとか」の特徴
それでは、気になる「せとか」の特徴についてご紹介いたします!
「せとか」の名前の由来
「せとか」は平成生まれの新しい柑橘の一つですが、2001年(平成13年)に品種登録された、まだまだ本当に新しい品種です。
名前の由来としては、育成地(長崎県口之津町)から望む地名の早崎瀬戸、瀬戸内地方での栽培が期待される事、またこの品種の持つ”良香”にちなんでいるといわれています。
掛け合わせについて
せとかは、
「清見タンゴール」×「アンコールオレンジ」に、更に「マーコットオレンジ」
を交配した品種です。
それでは、それぞれを詳しく説明いたしますね。
「清見タンゴール」
清見タンゴールは、「宮川早生みかん」と「トロピタオレンジ」との掛けわせです。
デコポンやその他の新しい柑橘の片親になることが多いタンゴール種となっています。
「アンコールオレンジ」
「キング」と「地中海マンダリン」の掛け合わせです。
「マーコットオレンジ」
アメリカで育成されたみかん類とオレンジ類の好雑種です。
上記の2種は私が以前、某百貨店のフルーツショップの店長のをしていた時代、よくギフト商品として販売していたことのある高級柑橘でした。
清見タンゴールに2種の高級オレンジ系が掛かっている事を考えると、美味しくないわけがないですよね。
気になる”味わい”について
掛け合わせでご紹介しているように、優良柑橘が3種類掛かっていてその3種類の良いところが集結して最高の味わいに仕上がっています。
糖度が高く優しい酸味を持ち、とても濃厚な味わい。さらに濃厚な甘味が加わることで、まったりとしたコクを楽しむことがます。
外皮も比較的柔らかく薄いため、手で皮をむく事も可能です!
ただし、外皮と果肉が密着しているため、時々、皮を剝いている途中で破れてしまう事もあります。
また、じょうのう(実を包んでいる薄皮)が非常に薄いのと、種がほとんどないので薄皮ごとパクパク召し上がって頂けます。
果汁もさのう(実を構成している粒粒)の中には、果汁が豊富にあるので、口に入れると甘い香りと果汁が口いっぱいに広がります。
また、”独特の香りも楽しんでいただける”、”一口で何倍も楽しんでいただける柑橘”といえるでしょう。
そんなこともあって「せとか」にはいくつものニックネームが付いています。
食感としては「とろける食感、せとか」や「柑橘の大トロ」など、優しい味から「柑橘のプリンセス」などいかにも上品な品位のあるニックネームになっています。
旬はいつ?
そんな人気の「せとか」っていつ頃から食べれるのでしょうか?
産地によっても異なりますが、一般的にはハウス栽培(施設栽培)「せとか」はだいたい12月後半~1月いっぱい食べることができます。
ハウス栽培物は、寒い時期には重油などを焚いてハウス内の温度を上げるため、価格がかなり高いものになります。
一般的な露地栽培物に関しては、2月~3月にかけて収穫期になりますので、この時期が本当に旬といえるかもしれないですね。また、お薦めの時期でもあります。
「せとか」販売価格と販売先
この希少な柑橘の「せとか」ってどのようなお店で販売されているのでしょうか?
やはり価格的に高価な果実という事もあり、ハウス栽培物に関しては、やはり百貨店の青果店やこだわりの青果専門店、高級果実専門店などが販売の中心となっています。
私の知っている百貨店の青果売り場では、大玉サイズ(化粧箱入りの中で10玉入り位の1個当たりが300g位の物)で1個が約600円~800円で、少し小玉なもので4個パックが約1,200円~1,500円で販売されています。
ちょっと小粒で物でも1個当たりが300円~400円弱ほどで売っているのが現状です。
今後3月に入って、露地物が出てくると少しは下がるのではないかと期待感でいっぱいです!
露地物の最盛期には、一般的な量販店や町の八百屋さんでもこだわりのお店などでは販売されるのではないかと思います。
味は非常に美味しいのですが、まだまだ生産量の少ない果実は元々が高くなってしまいます。
それにより、ますます手が出しにくい状況を生んでしまうため、産地の皆さんには、できるだけ買いやすくなるような価格帯で納められるよう人気を博して欲しいものです。
「せとか」の栽培
棘(とげ)
「せとか」は栽培上でも難しいといわれており、若木の時には枝に小さな棘(トゲ)がたくさんあるため、手を掛けて栽培する際に結構トゲが刺さってしまい手に傷ができる事が多く発生したりします。
唯、木が成木すると棘(とげ)がなくなるそうなので、それは安心です。
もう1種類人気の「甘平」は、樹が成木になっても棘がそのままなので、収穫前の手入れや収穫時期には大変なことになるそうです。
低温障害
また、「せとか」の栽培上の問題点は、露地栽培の時の”温度帯”です。
ハウス栽培時においては、外の温度が下がったとしても施設内の温度を上げる事で問題は解決できます。
しかし、露地栽培の物は外気温が氷点下近く下がってしまったり、成っている実に出荷前に雪が積もった場合は(時間にもよりますが)、果肉が低温障害を起こしてしまいます。
そうすると、果肉がスカスカになったり、味に苦みが出てしまったりして、出荷が出来なくなってしまうのです。
昨年が私たちの企画している愛媛の産地で1月に積雪があり、企画が飛んだことがあります。
ですから、柑橘類の販売を企画している時は年特に年明けからの積雪や寒波には常に敏感になっています。
「麗紅」と「はまさき」って何?
「麗紅」とは
そんな人気のある「せとか」ですが、同じ商品でも産地間で商品名が異なることがあります。
それは品種名ではなく”商品名”なので覚えておきましょう。
佐賀県(せとかの収穫量で全国2位の規模を誇る産地ではありますが)では、「せとか」を「麗紅(れいこう)」という名で販売しています。
「麗紅」には「せとか」と同様に「清見×アンコールオレンジ」×「マーコット」が掛かっていますし、食味食感共に同じです。
「はまさき」とは
また、「麗紅」とは別に「はまさき」と呼ばれる柑橘類が佐賀県にあります。
これは、佐賀県内でも昔から柑橘栽培(特にハウス栽培が昔から有名な産地)で有名だったJAからつが「せとか」を出荷前にセンサーなどでチェックして、糖度、形、品質など最高級の物を選んで作り上げた商品が「はまさき」です。
「せとか」の見分け方と保存方法について
「せとか」は、収穫後に「予措(ヨソ)」といって、一定期間を一旦倉庫に入れて保管して多少追熟を掛けてから(酸味が適度に抜けて行きます)選果選別を行います。
果実は採れたてだけが美味しいわけではなく、その果実の特性によって色んな作業が行われることが多くあります。
そんな作業終えていよいよ出荷になりますが、その後出荷され店舗に並ぶようになります。
今度は皆さんお店で上手に「せとか」を選んで頂くために、少しだけ情報をご提供したいと思います。
もし「せとか」を手に取る機会が有りましたら、表面の皮がなめらかで張りが有り、全体に着色が良く、きれいな少し濃い位のオレンジ色の物を選んでください。
また、持った時に重みを感じて、表皮の柔らかいものがお奨めです。
唯、柔らかくても、皮にシワがよって居たり、ぶよぶよな感じの物は線が落ちているので避けましょう。
「保存方法」は?
「せとか」はもともと表皮が薄いこともあり、「甘夏柑」や「八朔」などのように常温で何時までも置いておくようなことはできません。
冷暗所に置いておく様にして、出来るだけ早めに召し上がって頂く事をお奨めします。
鮮度が落ちると酸味が少なくなり、逆にぼけた味になってしまいます。
冷蔵庫の野菜質で保存して頂くと少しは日持ちもしますが、出来ればポリ袋などに入れるなどして乾燥しない様に気をつけて下さい。
最後に
まだまだ大変希少で少しお値段の高い「せとか」では有りますが、ニックネームが「とろける食感」「柑橘の大トロ」「柑橘のプリンセス」と3つも叶うような柑橘はあまりありません。
また、青果の業界紙でも我々の様な青果担当者が今後期待する果実の上位ランクにも選ばれているほどの柑橘です。
今後数年後にはもっと多くの産地からたくさん出てくると思います!
みなさんがもしこんな美味しい柑橘があると、興味を持って頂けたら、ぜひ今シーズン一度は召し上がってみて頂けたらとても嬉しいです。
その時は感想などもお聞かせ頂けたら尚さら嬉しいです。
ぜひともみなさんが「せとか」の出会って頂けるシーズンになることを祈っています!!
青果専門店とっておきや
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