皆さんこんにちは。青果専門店「とっておきや」の最年長の青果担当の杉本(66歳)です。
今回は、奄美大島産「タンカン」についてお話します。
今年は風邪が流行っている様ですが、皆さんは対策としてビタミンCをキチンと摂取していますか?
私は、柑橘類をちょこちょこ食べているので、今のところ風邪をひいておりません。今回は、奄美のたんかんについて詳しくご説明し、合わせて人気の柑橘類などもご紹介致します。
目次
「タンカン」ってどんな柑橘?
「タンカン」は、もともと”ポンカン×ネーブルオレンジ”の交配でできた柑橘といわれています。見た目はみかんより外皮はやや厚めで表面は少しゴツゴツしています。
果皮の色は橙黄色ですが、樹上で熟度が上がると外皮も中の果肉の色も「紅(べに)」がドンドン増していきます。
果実のサイズとしては、みかんよりは少し大きめで平均の重さが約150g前後です。(みかんのLサイズは大体125g~150g位ですのでほぼ同じ位です。)
食味は、甘味が強く酸味が少なく、果汁が豊富で芳醇な香りが特徴です。
また、見た目とは違い果肉を包んでいる薄皮(じょうのう)が薄いので、皮を剥いたらそのままパクパクといけるのも魅力です。
熟度が上がると、糖度が平均11度ほどにもなることがあります。
食味・糖度について
「タンカン」の食味は、糖度と酸味のバランスが非常に良く、果汁も豊富でオレンジ
から来る香りも強いのが特徴です。
気を付けないといけないのは、大変果汁が豊富な為、どちらかと云うと濡れナプキンなどが必要になる位です。
「タンカン」の旬って何時?
一般的には、1月後半から2月下旬までが、美味しく食べられる時期ですが、奄美大島のタンカンは。2月上旬から出荷され、ほぼ2月いっぱいで出荷がほぼ終了します。
タンカンは柑橘の中でも旬がとても短いので、なかなか見かける機会の少ない柑橘です。
それに加えて、産地からは一般的な市場へは出荷していないため、全国的にも一般的な量販店では販売してることが非常に少ないのではないかと思います。
産地からどのような場所へ出荷されているかというと、実はほとんどが地元消費【地元の業者(地元の市場や生産者が自ら販売したり)】のため、昔から決まった取引先等にしか出荷していない様です。
希少性の高い:鹿児島県奄美大島「タンカン」
そんな柑橘最盛期でも中々お目に掛かれない、非常に希少性の高い柑橘「タンカン」をご紹介したいと思います。
そして、今回は産地を「鹿児島県奄美大島産」に限定してを紹介させて頂きます。
「奄美大島産タンカン」は、ちょうど1年前に「奄美大島探訪記」でもご紹介しています。もしよろしければ、ぜひそちらも合わせてご覧ください。
「奄美タンカン」の特徴
奄美タンカンは、「垂水(たるみず)1号」という品種です。
他の「タンカン」の産地でも現在は、ほとんど「垂水1号」が栽培されている様です。
この品種は、他の品種(昔からある品種)と異なり、じょうのう(実を包んでいる房の薄皮を云います)が柔らかく、そのまま食べても薄皮が口に残らずそのままパクパクと、何房でも簡単に食べて頂けます。
外皮も熟度が上がると赤身が濃くなり、より柔らかくなるため、手でも簡単に自分で皮を剥くことができるんです。
そのためなのか、産地では「みかん」と呼ばれることも多くあります。
現地では、別名「濃いみかん(味も果肉の色も濃い)」とも呼ばれているほどなんです。
糖度についても、今は光センサー(光センサーでチェック 糖度、酸度、成熟度、傷果等をチェック)して導入することで、従来よりは味が安定してきたといわれています。
「タンカン」の歴史と主な産地
それでは、タンカンの歴史と主な産地についてご紹介いたします!
タンカンの歴史
「タンカン」はもともと中国の広東省が原産地で、その後明治30年代(1,900年前)に台湾を経由して奄美大島をはじめとする南西諸島(鹿児島県)に導入され、昭和9年(1,929年)ごろから本格的に栽培が始まったと云われています。
「タンカン」は漢字で「桶柑」と書きますが、これはもともと台湾で木桶に入れられて販売されていたことからきているそうです。
また、「短柑」とか「年柑」などともいわれております。
タンカンの主産地は?
産地としては、海外では中国の広東省、福建省、台湾の中部、北部が多く、国内では、鹿児島県が圧倒的なシェアー(約87%程度)を誇っています。
続いて沖縄県、宮崎県などで栽培されています。
鹿児島県内では、主力産地として奄美大島中心とした奄美群島、屋久島などの島々と鹿児島県内の一部産地(南さつま市や垂水市等)が中心です。
沖縄では、アルカリ性の土壌の沖縄北部【名護以北を山原(ヤンバル)と云います】で栽培されています。
そこでは、商品名または産地名をとって「ヤンバルタンカン」として売られています。
沖縄県では名護の伊豆味(イズミ)のタンカンが有名です。
この鹿児島県、沖縄県の2県でほぼ99%のシェアになっています。
奄美大島のJAあまみ
産地であるJAあまみは、もともとは平成18年4月に島々の7つのJAである、①奄美 ②喜界町 ③徳之島 ④天城町 ⑤和泊町(沖永良部島) ⑥知名町(沖永良部島) ⑦与論町が合併してできたJAのことです。
また、それぞれが7つの事業本部(大島、喜界、徳之島、天城、和泊、知名、与論島)を持ち地元を管轄しています。
特に最大の島である奄美大島は、「大島事業本部」として、1市2町2村に6つの支所(大和村、宇検村、瀬戸内町、住用町、龍郷町、笠利)と1つの事業所(請島)を置いています。
本部は、奄美の”名瀬”という場所にあります。
JAあまみの大島事業本部は、「タンカン」の栽培以外では”畜産”、加計呂麻島では大島特産のサトウキビを使った”キビ酢”を作り加工事業を営んでいます。
JAあまみ内で最大の「たんかん」の生産者と生産量は、やはり大島事業本部で生産者数が300名ともいわれています。
昔から、個人出荷が多いところでJAを通して出荷している方々は150名ほどだそうです。
奄美大島の気候と位置
奄美大島は鹿児島県の最南端に位置しており、気候は亜熱帯海洋性で四季を通して温暖多雨です。
島の中心地に位置する名瀬は、年の平均気温が約21度で日平均気温が10℃以下になる日はほとんどありません。
夏日が約180日近くもあることから、夏の期間が本土よりも1か月地区も長いのも特徴の一つです。
「タンカン」の栽培について
「タンカン」は4月に花が咲き実を付け、その後は、梅雨時期、猛暑の夏、台風の秋を過ごして、いよいよ収穫を迎えるわけです。
本来一般的な柑橘であれば、遅くとも11月又は12月に収穫することが多いのですが、この「奄美のタンカン」の収穫はなんと、毎年2月1日にJA管内で一斉に始めます。
いわゆるこの日が解禁日になります。地元では、当日は特定の生産者の園地で「ハサミ入れ」という一大行事が行われます。この日は産地の「JAあまみ大島事業本部」管内の優良生産者を
1名指定した園地で地元の有志の方々、JAの偉い方々一堂に会して「ハサミ入れ」という式典を併せて行います。
と云う事で、4月から2月までの約300日ほど樹上で生育します。
なんと、約10か月近く樹上で完熟させることで、より美味しく仕上げて収穫をします。
こんなに長い間樹上で栽培する柑橘はあまり聞いた事が有りません。
奄美大島の農業の主産業である「タンカン」の栽培についての一番の問題は、やはり台風などによる被害が出たり、温度変化(高温すぎたり、低温すぎたり)などの気象条件による収穫量の減少があります。
そのため、タンカンの園地ではタンカンの樹を守るために、それぞれの園地に高さ約3m近い「防風林」「防風ネット」等を設置しています。
沖縄県の産地でも同様の防風林は有りますが、高さや規模からいって断トツ奄美の方が大掛かりです。
近くで見ると本当に凄い光景を見る事ができます。それでも今シーズンは、大きな台風が数多く来襲したために、かなりの被害が出ているようです。
2月の市場は多種多様な柑橘が盛りだくさん!
私は毎日市場に行っていますが、特に2月は柑橘類のオンパレード状態です。ミカン類は終盤を迎えて入荷量が減ってきていますが、まだまだ人気は健在です!
皆さんもよく知っている品種のものから、聞いたことのないような柑橘類まで様々なフルーツが入荷しています。
それでは、市場にはどん柑橘が入荷しているのか、詳しくご紹介しますね!
大人気柑橘類、多数入荷!
人気の柑橘では、「デコポン(不知火・しらぬいを含む)」が各産地から入荷しています!
そして、最近特に人気のある柑橘は、「甘平(かんぺい)」(愛媛県だけでしか栽培されていない為希少性が高い)、「せとか」「完熟きんかん」「はまさき」です!こちらは社内でも大人気♩
皆さんもお馴染みの柑橘類
- 日向夏
- 土佐文旦
- ポンカン
- 清見タンゴール
- ネーブルオレンジ
- 宮内いよかん
- 甘夏
- 八朔(はっさく)
希少性の高い柑橘類
- スィートスプリング
- パール柑
- 湘南ゴールド(黄金柑)
- ブラッドオレンジ
- 国産レモン
国産の柑橘
- 青島みかん
- 寿太郎みかん
- 高価格のこだわりみかん(越冬袋掛けみかん)
輸入物の代表柑橘類
- グレープフルーツ(ホワイト&ルビーレッド)
- ネーブルオレンジ
- レモン
- メローゴルド(私のお奨め品です。)
- オロブロンコ(アメリカ産の呼び名です。同じ品種でもイスラエル産ではスィーティといわれています。)
などなど、様々な柑橘類が賑やかに入荷しています。
まさに2月は国産、輸入を含めて”柑橘類の最盛期”といえます。
最後に
今回は、「奄美大島タンカン」についてご紹介いたしました!
「奄美大島産タンカン」は私が長い間青果に携わってきた中でも、非常にまれな商品(柑橘だと)思います。
主力の出荷時期が2月とあって、他の柑橘類(国産だけでなく)と競合している中でも旬が特に短いです。
産地が限られ(南の島々が多い)、生産量も多くなく、その上出荷に関しては解禁日まで設けているんですよ。
上記のような、色々な条件から見て、大いにこだわっておすすめできる商品ではないかと思っています。
今年は、特に台風の被害が大きく、ヘタすると昨年の半分くらいしかない生産者の方々も多いので、もし今年「奄美のタンカン」と出会えたらぜひとも購入して召し上がってみてください!
場合によっては、鹿児島県の他産地、また、沖縄の「ヤンバルタンカン」でも構いませんので、ぜひ召し上がって頂けたらと思います。
今のところの予想では、来年は豊作が予想されています。(今年は裏年でもあった為)
来年たくさん購入頂くためにも、今年は味見程度にでもぜひ召し上がってにしてくださいね。
また、来年度からは、同産地の新企画商品「津の輝き」という柑橘も特にお奨めですから、この商品も楽しみにしていてください。
青果専門店とっておきや
最新記事 by 青果専門店とっておきや (全て見る)
- 白いとうもろこしは甘みがすごい!特徴や種類など大公開 - 2019年5月24日
- 藪塚スイカとは?人気小玉スイカの魅力に迫る! - 2019年4月24日
- びわの色々解明!長崎県産の大粒びわ「甘香(あまか)」はご存知? - 2019年4月10日