皆様こんにちは。青果専門店とっておきやを運営する株式会社オージーフーズの最年長青果担当の杉本(66歳)です。
先日、長野県上水内郡飯綱町へ行ってきました。
産地訪問の様子を詳しくレポートいたします!写真も動画もたっぷりあり、皆様に爽やかな長野の空気を感じて、長野のリンゴについてより知識を深めていただけたら幸いです。
目次
今回の産地訪問の目的は、飯綱町にある上野さんのリンゴ園への訪問です。今年のリンゴの状況を確認し、弊社で販売している「リンゴジュース」の原料についてお伺いしてきました。
りんごの栽培方法の秘密や、面白い工夫などなど見せていただきましたよ!
生産量全国2位!長野県産のリンゴの産地特長
長野県はリンゴの生産量で云えば全国第2位の生産量を誇ります。
全国第1位は圧倒的に青森県です。青森産のリンゴが市場のシェアーを約56%も占めていると云われ、2位の長野産リンゴのシェアーは約20%と云われています。
そして、生産量3位以降は山形県、岩手県、福島県、秋田県と東北地方が続きます。3位の山形県のシェアーは約6.5%となり、それ以降も1桁続きと、ぐっとシェアーが低くなっているようです。
ちなみに、山形県のリンゴ産地について青果担当の青木くんが書いたブログ記事もありますよ。山形のリンゴに興味がある方はこちらも必見です!
動画で見る!長野県のリンゴ園から眺めた絶景
リンゴの名産地としての長野県の特長は、高地に優良産地が多くある点です。
標高が高いと「良いリンゴ」が出来る理由は、平地から比べると昼夜の気温の寒暖差が大きい環境にあります。
昼間は温度が高く、夜になると温度がギュッと下がり、昼夜の温度差が10℃以上になる事が多くなります。この寒暖差のおかげで、リンゴの着色が良くなります。着色が良くなると果肉の熟度も比例して上がることになり、より美味しいリンゴが出来ます。
又、傾斜地で栽培されている事が多く、水はけが良いことも美味しいリンゴの出来る条件の一つです。
長野県の産地はこういった産地が県内に多く点在しています。
例えばどんな優良産地が有るかと云うと、リンゴ好きの方にはもうお馴染みの「安曇野(あずみの)」が有ります。安曇野産のサンフジの初荷は市場の初セリで何十万円もの値が出る事も有り、長野県内の産地の中でも別格の扱いになっていますね!
他の県内産地では、飯綱、上田、奥志賀etc…まだまだたくさんの優良産地が有ります。
今回、私が訪問した飯綱町は標高約600mの位置にあります。ここも長野県内では比較的高地にあると云えます。
長野県産リンゴの種類の特長
長野県で栽培されているリンゴの種類にも特長が有ります。
主力の品種は日本中どこでも殆どがやはり「ふじりんご」と云われる無袋ふじやサンふじが圧倒的ではありますが、それ以外にも長野県オリジナルの個性的な品種を栽培していますよ。
ちなみに、よくみる「ふじりんご」系について興味がある方はこちらのブログ記事を読んでいただくと面白いかと思います。併せてドウゾ。
長野県の人気リンゴ三兄弟
皆さんは長野県の「リンゴ三兄弟」という言葉を聞いた事は有りますか?
「りんご三兄弟」とは、長野県で開発されたオリジナル品種の「秋映(長男)」「シナノスィート(次男)」「シナノゴールド(三男)」の3つのリンゴを云います。
元々は長野県の果樹試験場で開発されたため、長野県内だけで栽培が始まったのですが、最近ではそれぞれの特長に合わせて他県の各産地でも栽培される様になってきていますね。
ですから、「信濃」の名前をもつ「シナノスィート」も、現在では「どこそこ県産シナノスィート」等々も市場で数多くみられる様になってきました。
ちなみに、この「りんご三兄弟」という名称はJA全農ながの(長野県内の各JAを統括する
団体)の商標登録名です。例え他県でこの3品種を栽培していたとしても、「りんご三兄弟」の名前で売り出すことが出来るのはJA全農ながの(と、管轄内の団体)だけです。
又、長野県では今年の夏の8月に、これも長野県で開発した新品種の「シナノリップ」と云うリンゴの販売を開始しました。この品種については、現在は長野県だけで栽培され、長野県だけで販売を許されている品種です。
このように、長野県は自分達で開発したオリジナル品種のリンゴを数多く持ち、栽培し販売して他県との差別化を図っています。
長野県飯綱町にある上野さんのリンゴ園
今回、2018年10月20日頃にお邪魔させて頂いたのは、長野県飯綱町のリンゴ生産者の上野豊さんのリンゴ園です。
この園地から周りをズット見回すと、遠くには志賀高原も見える様な壮大な景色が見られる場所でした。上野さんはリンゴを8カ所で栽培し、栽培面積の合計は約15ha(ヘクタール)程もあるそうです!
飯綱町は長野市から車で30~40分ほどかかり、道中ほとんどが登り坂になっています。
飯綱町は標高約600m以上の処に位置しており、先述にもあるように高地にある産地として、高品質なリンゴの産地として有名な地域です。現在、飯綱の気温は昼が15℃位で、夜は5℃位にまで下がるようです。
JAとしては「JA長野」の管内に有ります。特に飯綱の「シナスィート」と云えば、県内でも有名ブランドのリンゴです。
私自身も以前より、この飯綱の「シナノスィート」をもう10年位前から販売していますよ!
動画で見る!上野さんのリンゴ園の様子
お邪魔した上野さんのリンゴ園では、丁度主力品種のサンふじりんごの葉摘み作業をしているところでした。葉摘み作業とは、枝についている実の周りの余分な葉を出来るだけ摘んで、実を出来るだけ露出させ太陽光を当てるようにする作業です。
その時に、合わせて通称「玉廻し」と呼ばれる作業も行います。葉摘み後に実に満遍なく太陽光を充てる為の大事な作業の一つです。リンゴの軸ごとクルッと廻すので、実が落ちてしまうのではないかと心配しますが、落ちる事は無いよと仰っていました。
これも熟練の技ですね。
上野さんにお聞きした今年のリンゴの状況
上野さんのリンゴ園で今年も作柄等をお聞きしたところ、今年は春の天候が良く、リンゴだけではなく果実全体の生育が順調で、例年よりは少し早めに出荷が始まったそうです。
最初は天候が良すぎて少し小玉傾向で推移していたのですが、夏場以降に適量の雨が降ったため玉伸びがして、味もさらに良くなったとのこと!
「全体的に味も期待して欲しい」とも仰っていましたよ。
上野さんの主力商品であるサンふじは、今年幾つか来襲した台風の影響で少し樹が倒れたり、枝が折れたりしたそうです…。が、もともと豊作気味だったことも有り、影響は殆ど無いとお聞きしてホットしているところです。
今年のリンゴの収穫時期の見込みは?
今年のリンゴの収穫時期については、11月20日前後から始めて12月にかけて収穫する予定だそうです。
収獲が12月に入り込むことで、降雪による樹上での凍結被害などは無いのかとお聞きしたところ、「一旦収穫したリンゴの果実は雪が当たると凍ってしまうけれど、樹に成っているリンゴは雪が降っても凍らないから大丈夫」そうです。驚きですね!
又、一つ知識が増えました。ありがとうございます。
上野さんのリンゴはどこで買える?
上野さんのリンゴはどこで販売されているのかをお聞きしたところ「ギフト用」は直で販売したり、地元の管轄農協のJA長野に出荷したり、近所の道の駅等にも出荷しているそうです。
中でも、「ご家庭用」という企画が超人気企画になっているとの事でした。
ここで云う「ご家庭用」とは、「ギフト用」程厳格な企画ではなく、形、大きさ、色、などで判断されたお買い得品のことです。それでも、味や食味はギフト用とほぼ同じなんですよ!人気が出るのは当たり前ですよね。
また、当地の飯綱地区では、11月2~4週の週末には「ふじ祭り」というリンゴ祭りが行われます。この祭りはJAや道の駅などを中心に開催される一大イベントです。この時はもう凄い人出が有るそうで、県内の方々だけではなく、近県の新潟県や富山県辺りからも大勢の人がこの飯綱に来るんだとか。
上野さんはリンゴ園で採れたてのリンゴを直売し、飛ぶように売れてしまうと仰っていましたよ!市場の価格の約半値近い価格で売るので、売れてしまうのは当たり前でしょうね。もちろんここではお買い得な「ご家庭用」が圧倒的に売れるそうです。
上野さんのリンゴはとっておきのリンゴジュースの原料にも!
上野さんのリンゴは、リンゴジュースの原料として生産量の約10%位に当たる量を収めているとのことでした。生産している全品種を収めているそうですが、主力はやっぱりサンふじを中心にリンゴ3兄弟が多いようです。
上野さん曰く、「ここのジュース会社(株式会社長野興農さん)の100%ストレートジュースは本当にうまいよ!」と再三強調されました。
私もそう思います。ここの100%ストレートタイプのジュースを飲むと、他のジュースには中々手が出なくなってしまうのはよ~く分かります。やはり原料が良いからだとつくづく思いました。
※株式会社長野興農さんでは「トマト」「リンゴ(ふじ限定)」「秋映」「シナノスィート」「シナノゴールド」等々の100%ストレートジュースが製造されています。
上野さんのリンゴ園での栽培方法について
上野さんのリンゴ園で行われている密集栽培
上野さんのリンゴ園では、今はやりのわい化栽培や新わい化栽培と云った栽培方法ではなく、昔ながらの「密集栽培」という栽培方法が行われています。
密集栽培とは、高く伸びたリンゴの原木に枝をたくさんつけて実を成らす方法です。
リンゴは中々自然受粉が出来ない為、人の手で人工的に受粉させます。その分かなり手間が掛かるのですが、受粉時の天候や受粉の仕方一つでリンゴの下部が変形してしまう事がままあるため丁寧な作業が要されます。
又、栽培の途中に摘果も必要です。これは中心果の周りの4~5個を摘んでしまう作業です。出来るだけ良い場所の実を残すようにします。その後、葉摘みと玉廻しの作業等を行い、ようやく出荷に結びつけることが出来ます。
上野さん曰く、樹の立て芽を残すことで樹木が栄養分を吸い上げることが出来、栄養素が樹全体にまわり、良い実をつけ、形が大きくなり、味が良くなるとのこと!
これも今回新たに勉強したことの一つでした。
上野さんは現在リンゴの園地を飯綱地区で8カ所も持っていて、ご本人と奥さんと息子さんのほぼ三人で行っていると聞き、これまたビックリでした。
元々は2カ所リンゴ園を持っていたそうですが、高齢化などで辞める方が多く、上野さんに引き継いで欲しいとお願いされ、その結果として8カ所にもなってしまったそうです。
今年は既に早生系の「つがる」を20kgコンテナで約450箱、中性種の「シナノスィート」を同じく20㎏コンテナで約400箱出荷を終わっているそうで、主力に「サンふじ」は20㎏コンテナで約1,300箱を見込んでいるとの事でした。
この主力3品以外にも、「秋映」「シナノゴールド」「シナノリップ」等も栽培されています。
収穫時期の頼もしい助っ人の皆様
毎年この収穫時期になると東京や大阪の「生活クラブ」の方々や上野さんのリンゴのファンの方々が収穫のお手伝いに交代で来てくださっているそうです。
それを聞いて納得です。上野さんのリンゴ園ではご家族3人で運営していると聞いていたので、8カ所ものリンゴ園を全て収穫して回れるのか心配だったのですが、応援に来てくださる方々がいらっしゃるんですね!
それも、上野さんが農家を始める前の経営していたペンションがすごく役に立っているそうです。お手伝いの方々は上野さんのペンションに宿泊し、収穫のお手伝いをして、採れたての新鮮なリンゴを数箱購入して持ち帰るそうです。
そこからご近所や知人に配ると皆が美味しさに喜んで、今度はその方々が収穫のお手伝いに来られるんだとか…。
動画あり!リンゴ園に響く鳥の鳴き声の正体
今回の産地訪問で特に驚いたのは、リンゴ園の中に「鳥の鳴き声用」の機械が置かれていたことです。
この機械の役目は、リンゴを食べてしまう恐れのあるトンビやカラスなどの鳥たちのお互いの天敵となる鳥の鳴き声を四六時中放っています。この地域に住む鳥10種類の鳴き声を流し続けているそうです。
なんせ10種類の鳥の鳴き声ですからね、最初は「園内に鳥が結構いるのかなぁ」と云う感じでしたが、何と機械でした!驚きました~…。
道中で発見!最新のリンゴ栽培技術
今回、上野さんのリンゴ園へ向かう道中の長野県で新たな3つの発見がありましたよ。
飯綱リンゴの「雪むろ貯蔵」
上野さんのリンゴ園へ行く途中の、待ち合わせ場所の近くで「飯綱町雪むろ施設」という設備を見る事が出来ました。
まだ10月だったので稼働はしていませんでしたが、年明けになると飯綱は積雪が多くなり、それを利用した「低温貯蔵庫」です。
年明けになると、リンゴと雪を同時にこの「雪むろ」へ大量に入れる事でリンゴを一旦「冬眠状態」にして鮮度を維持することができる施設になっています。温度はほぼ0℃位を保ち、3月位まで貯蔵して出荷します。電気代の掛からない雪国ならではの貯蔵施設と云えるでしょう。
名前は聞いていましたが、実際に見たのは初めてでした。いつか稼働している時期にも見てみたいですね!
作業とスペースをグッと効率化させる「新わい化栽培」
新しいリンゴの栽培方法と云われる「新わい化栽培」を見ることも出来ました。又の名を「トールスピンドルシステム」とも云われます。
リンゴの苗木を真直ぐに立て、高さを一定に保ち、横幅も等間隔に保ち、縦幅も一定間隔をとり、作業とスペースを効率化する栽培方法です。
この方法だと、作業用車両などが園地に入って諸作業が非常にやり易くなるそうです。今後はこの方法に切り替わったり、新規参入もしやすくなるのではないかと思われます。りんごの栽培形体が大きく変わるかもしれませんね。
いいまでのリンゴの栽培方法とは全く異なった方法ですから、皆さんも写真を見て頂くとおそらくビックリ「これがリンゴの樹!?」と思われるのではないでしょうか。
珍しい接ぎ木!サンふじの原木にシナノゴールド!?
非常に珍しい接ぎ木を行っている園地を見つけました。この写真の赤いリンゴと黄色いリンゴは1本の樹から成っているんですよ!
原木は「サンふじ」で、何と同じ樹に「黄色いシナノゴールド」が成っている枝がくっついているんです。こんな光景は長い間色んな県の色んなリンゴ園を尋ねましたが、初めて見た、とっても貴重なものでした。
ちょうど私達が立ち寄った時はこのりんご園の園主の方いらっしゃらず、なぜこのような事をしているのか聞いてみたかったのですが、残念でした…。
次回行く機会が有ったら、是非この疑問を解決したいと思っています。
あとがき
- 長野県は全国第2位の生産量を誇る人気のリンゴの名産地!
- 農家さんによってそれぞれ良いリンゴを作るための工夫をされている!
- 標高約600mの高知にある長野県飯綱町の上野さんのリンゴは人気の逸品!
私自身もこの業界で長いこと仕事をさせて頂いており、色んな産地へ行かせて頂いていますが、何度行っても必ずと云っていいほど新しい出会いや新しい発見を知ることが多くあります。66歳、まだまだ勉強途中です。
これからも新しい時代の観点で色々と果物を見て行きたいですね!
こうしてブログで皆さんに産地の様子をお届け出来ることも嬉しいです。皆さんが日本全国各地の青果物の産地についてより興味を持っていただけたら何より嬉しいです!
本日も青果専門店とっておきやのブログを読んでくださってありがとうございます。
今後とも旬な青果の話題をお届けいたしますね。どうぞお楽しみに!
杉本
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