皆様こんにちは。青果専門店とっておきやを運営する株式会社オージーフーズの最年長青果担当の杉本喜広(66歳)です。
秋冬の代表的な果物の中でもお馴染みの「みかん」の特長や旬について、みかん雑学をたっぷり盛り込んで詳しくお話しいたします。おいしいみかんの見分け方も解説しますね。
この記事を読んでいただくと、今日からあなたもみかん博士になれるかも!
目次
私は個人的に、みかんは日本が世界に誇れる代表的な果実だとずっと思っています。
果汁などで手を汚さず、手で簡単に皮を剥くことが出来て、ぱくぱく食べられます。さっぱりとした酸味と甘味で、何個でも食べられる気がしませんか。日本人の口にとても良く合っている果実だと思います。
そんな凄い果実に関する私が持っているみかん知識をまとめて記事にいたします!
ちなみに、私のおすすめのみかんの品種に関しては別記事も合わせてご参照くださいませ。
ウチの青果担当スタッフが書いた、みかんの保存方法のコツをご紹介している記事も是非ご一読ください。みかん好きの方に知っていただきたい豆知識です。
みかんの正式名称とは
「みかん」とは、正式には「温州みかん(うんしゅうみかん)」と呼ばれています。
温州みかんという名前は、柑橘類の名産地と云われる中国浙江省の「温州」からあやかって付けられたのだとか。ただし、温州が原産地と云うわけではありませんのであしからず…。
温州みかんは日本国内では主に関東以南の暖地で栽培されていますね。温暖な気候を好みますが、柑橘類の中では比較的寒さに強いこともみかんの特長の一つと云えます。
又、甘い柑橘と云うことから漢字では「蜜柑」と表記されています。
英語名は「Mikan」とか「Mandarin Orange(マンダリンオレンジ)」とか云われるようです。
みかんの年間「旬」カレンダー
みかんの旬が一年間の間でどのように移り変わるか詳しくお話しいたします。
みかんは凡そ4月末位か、又は、5月の連休明け位には「ハウスみかん」からみかんのシーズンが開始します。近年では栽培技術も発達し、新しい品種や今までになかった時期や産地からもみかんが出てきているようです。
最終的には翌年の3月下旬位まで市場でみかんを見かけることもあり、そうなると殆ど一年中みかんが有るように思われても不思議ではないかもしれませんね…?
では、それぞれの時期で一番「旬」と云われるみかんをご紹介いたします。
4月頃~9月末位まで「ハウスみかん」
4月か5月頃から、9月末位まで取り扱われるのが「ハウスみかん」です。
ハウスみかんとは、施設内で冬場に重油を焚いて、温度管理、湿度、潅水を管理して寒い時期も外気温を基本的遮断して、過ごし春から夏場に掛けて出荷するみかんです。
品種は「宮川早生種」が多く使われています。
ハウスみかんの味の特長は、秋冬の宮川早生と似ています。甘味が濃くジューシーで程よい酸味が有り、とても味も濃く、ジョウノウ(実を包む内皮)が薄く、食べ易くとても美味しいみかんと云えますね。
なんといっても、春から夏にかけておいしいみかんを味わえることが価値になっています。夏のお中元や帰省のお土産などの進物用にも良く使われ、所謂、高級品の一品になっています。
主な産地としては次の通りです。
愛知県、和歌山県、愛媛県、高知県、広島県、福岡県、佐賀県、熊本県、宮崎県、長崎県、大分県等々が有ります。
やはり、九州、四国、や愛知、和歌山などの露地みかんでも有名な産地が多いですね。
また、珍しいハウスみかんとして、熊本県産のJA鹿本産「グリーンハウスみかん」という外皮が緑色のハウスみかんもあります。味が濃いと云うよりは爽やかな味のみかんを味わうことが出来ます。
こちらの出荷は6月頃から出荷がはじまり、8月~9月頃までは続きます。
9月上旬~10月下旬位まで「極早生温州」
9月上旬~10月下旬位まで取り扱われるのが「極早生温州(ごくわせうんしゅう)みかん」です。基本的には露地栽培で栽培され、着色も比較的良いみかんです。
食味の特長は、じょうのう(実を包む内皮)は普通の食感で、糖度は大体10度前後とそれほど高くはありませんが、酸度も比較的低く食べ易い味わいになっています。
極早生温州は常にそれぞれの産地が品種改良に取り組んでいて、常に新しい品種が紹介されることが多くなっています。特に最近では、優良品種の品種改良が進み、人気の品種を作り上げてきています。
極早生みかんの品種としては「宮本早生」「日南1号」「ニュー日南」「岩崎早生」「上野早生」「ゆら早生」等が有ります。
又、産地としては、ほぼ全国のみかん産地が栽培、出荷をしています。九州地区はほぼ全県、四国、中国地区のみかん産地は勿論ですが、みかんの生産量ナンバーワンの和歌山県は当然ですし、東海地区でも静岡、愛知、三重、静岡等々が出荷しています。
この時期になるとみかんの着色も良くなり、スーパーなどの店頭でもみかんの売り場スペースが日々広がってくる頃でしょう。
ですから、極早生温州みかんの出荷が多い時期こそが皆様から見たら「みかんの最盛期」と見られるかもしれませんね。本当はもっと寒くなって来る季節がみかんの最盛期と思っている私の考え方がもう古いのかもしれませんネ…。
11月上旬~12月中旬「早生温州」
11月上旬~12月中旬頃になると、「早生温州みかん」がピークを迎えます。
みかんの中での主力を担う品種と云えます。産地は極早生温州同様に全国のみかん産地で栽培されています。
私が百貨店に居た頃はこの早生温州から力を入れて販売していました。
早生温州の品種としては「宮川早生」「興津早生」「田口早生」「木村早生」等が有ります。
この中で特に有名なのは宮川早生です。宮川早生は生産者から見ると比較的育て易く、収量性も良い等々優れた特長があります。全国的に多く栽培されています。
味の特長としては、糖度も比較的高く程よい酸みがあり、糖酸のバランスが良い上にじょうのうが非常に柔らかく食べ易いと云うところが人気です。
どちらかと云うと小玉系の方が味の良い特長が出易いので、小玉系が人気です。
又、ハウス栽培用としても広く用いられていて、袋掛けして樹上で越冬完熟用などにも広く用いられています。お歳暮時期や、ギフト時期に販売されているこだわりみかん等の大多数がこの「宮川早生」と云われています。
生産者の方々の中には、この宮川早生を自宅で貯蔵させながら春まで食べている方もいるそうです。羨ましい!
12月上旬~下旬頃「中生温州」
12月上旬~中、下旬位になると、中生温州みかんが出てきます。早生温州とは若干出荷時期が被りますが、扱い期間が非常に短い品種です。
早生温州と比較すると、外皮やじょうのうは少し厚めになったり、浮き皮が発生したりしますが、糖度も高く、適度な酸味の有る為、「通」に好まれる品種になっています。
中生温州の品種は「愛媛中生」「久能温州」「瀬戸温州」「向山温州」等が有ります。とくに代表的な品種としては「南柑20号」が特に有名です。
12月下旬~翌年1月頃「普通温州」
12月下旬から年明け1月頃にピークを迎えるみかんが「普通温州みかん」です。年末から年明けに取り扱う品種の代表的なみかんです。
食味や食感の特長などは中生温州からの引継ぎに近いものと云えます。
極早生温州、早生温州、中生温州等々を継続して栽培出荷している産地の多くは、この普通温州でみかんの出荷がほぼ終了する産地が多いです。その為、普通温州のピークが終わるとその後のみかんの市場入荷が極端に減少します。
12月下旬~翌年3月中旬頃「青島温州」
普通温州みかんと入れ替わりで出てくるみかんは「晩生種」とか「奥手」とか云われる品種が出てくるようになります。
12月下旬~3月中旬頃にピークを迎えるのが「青島温州みかん」です。代表的な産地と云えば、皆さんもよくご存知の静岡県JA三ヶ日(みっかび)の代表的な品種です。
我々の業界で云えば、「JA三ヶ日と云えば青島みかん。青島みかんと云えばJA三ヶ日」と云われる位の青島みかんの取扱量が日本一のJAです。
食味食感の特長としては、糖度が比較的高く、酸が余りないが、じょうのうが比較的厚めです。どちらかと云うと大玉系のみかんです。青島温州が多く出回る時期は寒さがかなり強い頃の為、比較的酸味の少ない青島温州が好まれます。貯蔵性が高いことも特長の一つです。
主な産地は、静岡県が中心で、熊本、愛知、神奈川等も出荷しています。
2月上旬~3月中旬位「寿太郎温州」
年明けの2月以降には「十万温州」「大津4号」「今村温州」「紀の国温州」等のみかんが出てきまして、最近とくに人気があるのが「寿太郎温州(じゅたろううんしゅう)みかん」です。
寿太郎温州は静岡県沼津市のJAなんすん西浦柑橘共選場産の特選みかんとして人気の有る品種です。3月中旬位まで取り扱われます。
特長は、糖度も比較的高く濃厚な味わいがあり、どちらかと云うと小玉系のみかんです。多少果皮は硬めだが、日持ちも良いところもポイントです。ここ数年は市場でもかなり人気が出てきています。
ちなみに、寿太郎みかんはこちらのブログ記事にも登場しています。静岡県出身の大村君が書いた記事です。
青果部長直伝!!おいしいみかんを選ぶ5つの見分け方
良い旬のみかんの時期を詳しく解説したところで、続いてはおいしいみかんを見分けるための5つのコツをお伝えいたします。
ご自分でみかんをご購入される時、贈答品で箱ごとみかんを頂戴した時などなど、次に食べる一玉を選ぶ時にこの5つの点を意識してみてくださいネ。
形は扁平なもの!
形状は、出来るだけ扁平な形のものを選んでください。
柑橘類は基本的にはどんな品種の物でもより扁平な形が良いと云われています。
縦長なものは雨が多い年に多くみられる傾向で、味についてはあまりお奨め出来ません。又、もし同じ規格(例えばMサイズとかLサイズとかでも)の場合は扁平な方が縦長な物よりも重量的にも重いと云われています。
様は、実が詰まっていると思って下さい。
外皮はゴツゴツしたもの!
表面の皮については、もしかしたら皆様は傷が無くキレイでつるつるの物を選ばれるかもしれません。それはそれで当たりでは有りますが、私は自分でみかんを選ぶ際には、外皮がどちらかと云うとゴツゴツしたものを選ぶようにしています。
実は、みかんの中身が完熟すると、中身が充実して外皮が小さなゴツゴツした状態になってきます。外から触ると実が張り出したような感じです。皮が剥きにくく、ポロポロと細かく切れる様になります。又、皮離れも悪くなります。この様な状態を「菊みかん」と云います。
私はどんな時もまずは菊みかんを探します。
菊みかんは、品種的には早生温州(特に宮川早生)に多く出来ます。中生温州、普通温州位まで有ることも。これは外皮が薄いことから起きる現象だと思います。青島温州からの晩生種系にはあまりみられない状況です。
外皮の色付きが良いもの!
外皮の色は赤みが濃いものをお奨めします。
外皮は直接の太陽の光を受けますから、より光が当たった方が美味しいです。樹の内側になっているものよりは、樹の外側に成っている方が美味しいと云われます。
また、樹の外側になっていると風なども多く当たることも有るので、色は良いがやや皮に擦れたような跡が残っているものが有りますが、こちらのみかんの方がお奨めです。良く「外なりみかん」などの商品名で販売されているのがこのみかんです。
実は結構お奨めです。どちらかと云うと味本位とでもいうのでしょうか?
ヘタの切り口が小さく薄緑のもの!
「ヘタ」と云いますか、「みかんのてっぺんの切り口」に注目してください。
みかんは生産者の方々が1個ずつハサミを使って手作業で収穫します。その収穫した切り口を良く見てみてください。それぞれ大きさが異なりますが、出来れば小さくて色が薄い緑色の物がお奨めです。実の締まりが良い=味が良いと云われます。
浮き皮の無いもの!
外皮が柔らかいからと少し浮いているものを選ぶ方がいるかもしれませんが、これはあまりお奨めできません。あれは皮が柔らかくなったと云うよりは、実はみかんの皮と果肉が分離して隙間が空いている状態なんです。
個人的な感覚ですが、浮皮のみかんで美味しいみかんには出会ったことが有りません…。
あとがき
この記事を読んでいただいて、もし初めて知るみかん知識がひとつでもあれば幸いです。
詳しくお伝えした通り、みかんって実は季節ごとに種類を変えて市場に顔を出している果実なんですね。春の4月頃のハウスみかんから始まり、極早生温州、早生温州、中生温州、普通温州、晩生種と…。
それぞれの季節で旬のピークを迎えるみかんをお楽しみくださいませ!
これからも果物についての雑学やここだけの話をブログに書きますね。今後とも青果専門店とっておきやと何卒よろしくお願いいたします。
杉本
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