皆さんこんにちは!最年長青果担当の杉本(66歳)です。
今日のブログのテーマは「メロンの等階級」について詳しく解説いたします。
これから6月から8月頃にかけて旬のピークを迎えるメロンことを、皆様により深く知っていただけたら幸いです!
この記事をぜひ参考に、今年のメロンを買う時は等階級もチェックしてみてくださいね。
目次
メロンの販売価格の秘密とは
みなさんお店で果物を購入するとき気になるのは、やはり”販売価格”ではないでしょうか?
なんと言ったって、メロンは高級フルーツの代名詞ですからね…。この価格ってどうやって決まるかご存知ですか??
メロンの販売価格はどう決まる?
基本的に、商品の販売価格は仕入価格(一般的には市場卸し価格ともいわれる)に準じて決める事が多いです。
それでは、仕入価格はどうやって決まるのでしょうか。
青果物の仕入価格はその商品の「等階級(とうかいきゅう)」で決まるのが一般的です。
JAや出荷組合などの団体や個人の生産者・出荷元は、それぞれ「等階級」を決め、それを基準にして市場卸し価格を決定します。以前は、青果物は競売(競り)で価格が決まっていましたが、最近は相対(あいたい)で産地からの希望価格を提示されることが多くなっています。
等階級とは
「等階級(とうかいきゅう)」とは、一般的に「等級」と「階級」に別れて表示されます。
「等級(とうきゅう)」とはその商品の持つ “品位基準” をいい、「階級(かいきゅう)」とは “形状基準” をいいます。
等級とは
「等級(品位基準)」を決める要素としては糖度(センサーでチェック)や熟度、見た目(形状(正常果、変形果等))、色(早撮りの有無)など、各出荷元(団体や個人)の決めた出荷基準を参考に決定します。
等級を表すのは一般的に「秀品」「優品」「良品」などが使われます。
階級とは
「階級(形状基準)」とは簡単にいうと大きさ、重さのことをいいます。
階級を表すのは一般的にS(スモール)、M(ミドル)、L(ラージ)、2L(LLも有ります)です。
ちなみに余談:最近見かける桃や梨の「等階級」
商品の品種や産地、商品特性などを考えて変わった「等階級」の表示も最近では多く見られます。
例えば、山梨県のJAふえふき「みさか共選」では、最高級ランクの桃に「大糖領」という名前を付けます。当て字で「だいとうりょう」と読むんですよ。
長野県のJAみなみ信州では南水梨の最高ランクに「太鼓判」、次のランクが「優糖生」という等級で表示しています。
他の産地との差別化を図ってブランド化を進めていて、面白くてインパクトが有って覚えやすいのもあり、今はすごい人気商品になっています。
メロン類の「等階級」
いろんな果実の中でこの等階級を付けるのに、いろんな基準や付け方や呼び名が有るのが国産の「メロン類」です。
5月初旬位から夏場に掛けて全国各地から様々な「メロン」が出荷されてきて、お店を飾る光景が多くみ有られます。
ここでメロンの「等階級」の決め方や、呼び方の変わっているメロンいくつかをご紹介します。
青肉系(本来は緑色)
- マスクメロン(アールスメロン)
- タカミメロン
- アンデスメロン
- アムスメロン
- 肥後グリーンメロン
- オトメメロン
- プリンスメロン等
赤肉系
- 夕張メロン
- サッポロレッド113(富良野メロン等)
- ルピアレッド
- クィンシーン等
白肉系
- ホームランメロン
など数えきれないほどの品種が有ります。(ネットの有無を含む)
メロンの品種についてもっと詳しく知りたい方は青木君が書いたブログ記事がおすすめですよ!
メロンの等階級は品位基準で決まる
通常のメロンの等階級は、一般的な果実と同様にJAなどの出荷団体や個人で決められた品位基準で、
- 糖度(センサー、又は圃場、選果場にてチェックして基準に達しているモノ)
- 見た目のきれいさ(形、傷の有無)
- 網目(ネット)の張り具合、きめの細かさ
- 色具合
- つるの張り具合
- 熟度
などを総合的に判断して「等級」に分けています。
例えば最高ランクを「秀」といったり「特秀」といったりして、2番手、3番手の基準に合わせた規格を箱の側面に表示します。
時には、ギフト出荷の多いところで箱ごと販売する場合は「秀」を「赤秀」「黒秀」「緑秀」(産地によって呼び名順序が異なります)の呼び方をするところもあります。
「階級」は一部のメロンの品種を除いて、5㎏詰の箱に何個入るかで表示を変えています。
1個当たりの重さは、生産者が1個1個重さを測ったり、目視で大きさを把握して箱詰めをすることが多いので5㎏箱といっても全てが5㎏きっちりという事はほぼありません。
このような形で「等級」+「階級」が合わさり、箱の横には「秀L」とか「優2L」とか「良M」等が表示され、それが市場卸し価格の基盤となっています。
時には階級のところが玉数表示「3玉」「4玉」「5玉」「6玉」もあるようです。また、一般的にはS、M 、L、2L、3L以外にLと2Lの間にLAだったり2LAという階級を付ける事も多くあります。
静岡県産マスクメロン(品種:アールスメロン)の等階級
メロンの品種の中でも、等階級の基準設定作業が厳しいメロンがあります。
皆さんがよくご存知の静岡県産「マスクメロン」(アールスメロン)の厳しさは特に有名なんです。静県産マスクメロンは国産果実を代表する商品で、高額果実の一つです。
以前もご紹介したことがあったと思いますが、私は20代前半から都内のとある百貨店の青果(ギフト果実売場、一般果実売場、野菜売場、ジューススタンドを併設している店舗)の責任者を長く勤めていたことがありました。
そこでのお店の顔といえば、やはり静岡県産「マスクメロン」でした。
最低で1個5,000円以上、高いもので大玉(約1玉1,5kg位)が桐箱に入って1個10,000~15,000円で販売していました。ギフトシーズンはもちろんですが、やはり年間を通していくつ販売できるかが、お店の格付けと思っていました。
マスクメロンは春夏秋冬それぞれ種が異なり年間で多くて4回(一木一果といわれ90日掛けて1本の木から1個だけ収穫)しか収穫できません。
そして、収穫後には厳しい検査が待ち受けています。
出荷時には、出荷予定のメロンの中から検査委員が無作為に抽出し、「糖度」「熟度」「風味」「肉質」「食味」等の品位をチェックします。
続いて、外観(見た目、ネットの張り具合、極めの細かさ、つるの具合等)をチェックしてランクを付けます。
静岡県産マスクメロンの最高級は「富士」!
静岡県産マスクメロンの最高級ランクは「富士」「山」「白」「雪」という等級が決められています。
その中でも「富士」は、約1%も出ないといわれているほど希少で、まさに幻のマスクメロンなんです!
また、静岡県産マスクメロンの箱には、総体重量(果実のみ)が0,1kg単位まで表示され、最大重量は9㎏となっています。
そして、生産者の責任を明確にするために全ての箱に生産者名も入っているんです。例えば、箱の横の表示は「9,0kg 山 6入」「○○太郎」となります。
ちなみに、静岡県産マスクメロンの産地の正式名は「静岡県温室農業協同組合」(通称メロックス)といって温室メロンの専門農協です。
宮崎県産「メロメロメロン」の等階級
静岡県産マスクメロン以外のアールスメロンでは、宮崎県産「メロメロメロン」があります。
このメロンは宮崎県の基準として光センサーで等級(品位基準)をチェックして、
- 「糖度(15度以上)」
- 「ネット(張り、盛り、太さ、バランス、他)」
- 「果皮の色」
- 「玉あざ」
- 「軟果」
- 「病害果」
- 「発酵果」
- 「つる首」
などの項目をチェックし上から順番に、「A1、A2、A3、A、B」のランク付けをして、上から3番目の「A3」までを宮崎県の商品ブランド「みやざき温室光センサーメロン」の愛称「メロメロメロン」として販売できます。
ちなみに、光センサーを掛けないものは、例え糖度が高く見た目が良くても、残念ながらこの称号は使えないのです。
等階級の名前が「ひでこ」!? かわいい名前の銚子地区のメロン
他にも目立つ「等階級」の選別を行っているところでは、関東地区のJAちばみどりの飯岡地区のタカミメロン(青肉・赤肉共に)と銚子地区のアムスメロンが有名です。
銚子地区のメロンは厳しい選果基準が設けられています。
- 品質固有の色沢
- 形状
- 熟度(完熟品)
- ネットが均一に発生しているもの
更に、糖度については10項目の検査をして(1圃場2個など試食する規格大きさ、果実の位置などが決まっている)それをクリアしたものが「ひでこ」「ゆうこ」「はなこ」「ももこ」「まるこ」の順に決められます。
その中で糖度が16度以上の物には「甘16」というシールを貼って出荷します。
つまり、銚子地区のメロンで「ひでこ」と「甘16」の等階級の印が付けられているものがあったらそれは最高級品ということがわかりますね!
夕張メロン(赤肉系メロン)の品位基準
赤肉を代表するメロンといえば皆さんご存知の北海道夕張産「夕張メロン」!!
知らない方がいないほど超有名なメロンですよね。
夕張メロンも静岡産マスクメロンと同じく厳しい選別で等級(品位基準)を決めているんです。
夕張メロンはセンサーはかけません。
そのかわり、昔ら伝統を受け継いだ選別方法で行っているのだとか。
毎年検査委員が決められ、その検査委員が選果場で無作為にサンプルを抜きとり、糖度計で検査をして「秀」「優」「良」のシールを貼って、箱に等級の押印を行っています。
シーズン(最盛期)になるとものすごい量が入荷しますが、チェックするのは大変な仕事です。実際、数年前にJA夕張をお尋ねして選果場で実際の作業を拝見しましたが、夕張メロンのブランドはこういう皆さんが支えているのだと実感しました…!
夕張メロンについてもっと知りたい方は当店の青果スタッフ田中が書いたブログ記事をぜひ読んでみてくださいね。
他の赤肉系メロンは?
他の赤肉系では、北海道産の富良野メロンなどの赤肉系メロンもいくつかありますが、基本的には圃場と選果場で糖度やJA内の基準をチェックして出荷しています。
階級については北海道産のメロンは箱の大きさは1箱8㎏詰で4玉、5玉、6玉など、8玉くらいまでの規格があります。
他の有名産地の等階級について
関東地区では茨城県が千葉と並んでメロン産地としては有名ですが、特に茨城県内ではJA旭村が有名です。
旭村では、「クィンシーメロン(赤肉系)」「オトメメロン(青肉系)」「アンデスメロン(青肉系)」を生産していますが、それぞれ全て光センサーによって「等階級」をチェックしています。
全てのメロンに共通している
- 糖度が18度以上の物は全て「極秀(プレミアム)」
- 16度以上が「特秀」
- 14度以上が「秀」
- 13度以上が「優」
- 12度以上が「A」
- 12度未満が「規格外(未出荷)」
…となっており、それ以外に熟度、硬さ、大きさ(重さでなく横幅で決める)をチェックしています。その中で「プレミアム」と「特秀」は専用の段ボールを用意していてLA~4Lまで対応しているんですよ。
我々もクインシーメロンのプレミアムと特秀品は企画としていろいろと提案をし提案しているところです。
食べごろの見分け方
とにかく日本全国でいろんなメロンがあり、それぞれが特徴のある等階級を決めていますが、正直なところ私的にはあまり等階級にはこだわらず、いかに食べごろでメロンを食べるかであると思っています。
お店の方に聞くのが一番ですが、私の個人的な意見としては、常温で保存し、外皮の色が変わってきたり、軸のところが割れてきたり、つるが少し枯れてきたり、甘い香りが出てきたらそろそろ食べごろです。
その状態になったら、冷蔵庫で小一時間くらい冷やしてから召し上がってみてください。
※最後の「夕張メロン」は届いたらすぐに冷蔵庫に入れ、早めに召し上がってください。
メロンの時期はいよいよこれからです!
ぜひ、よりおいしい食べ方でメロンを存分に楽しんでくださいね♩
あとがき(最近の市場の近況)
今日はピーク前ということでメロンのお話しをしました。
もう時期的に日々暖かさを感じる様になってきましたね。朝早起きして市場に行くのもあまり苦にならない季節になり、私にとっては一番良い季節を迎えています!
我々青果担当者は ” 市場へ行ってなんぼ ” という古い概念の抜けないのが現状です。
この時期になると、今までお店のメインを飾っていた “苺” “国産柑橘類(デコポン・みかん・清見タンゴール等)” などがほぼ終盤を迎えてきてしましました。
今の季節は、「端境期(はざかいき)」といって季節商品の切り替えの時期なので、正直なかなかオススメできるフルーツのない寂しい季節でもあります……。
端境期を終えて次に出ていくるのが、ハウス栽培品「サクランボ・枇杷」などです。
他にもスイカやメロン、国産柑橘類でも晩柑類(終盤に出てくる柑橘類の総称)夏みか
ん、河内晩柑(宇和ゴールド、美生柑、ジューシーオレンジ等産地によって呼び名が異
なります。)、ブラッドオレンジなどなど日頃あまり見かけない柑橘が多くなります。
まさに国産果実は我慢の時期!!
しかし、輸入品のグレープフルーツもとてもオススメな時期なんですよ!
また明日も新宿の市場へ行ってきま~す!
杉本
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